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その先へ
パート2

リモートカメラ撮影の確実性と可能性を決定的に変える
AFP通信社とニコンのパートナーシップ

誰も見たことのないアングルからの映像を提供するリモートカメラ撮影。
今までは、設定の難しさや操作の不安定性などの課題を抱えていました。
これから活用の拡大が期待される分野に、AFP通信社の創意とニコンの技術で
生まれたNX Fieldシステムが、映像表現の可能性に大きな飛躍をもたらします。

1人のフォトグラファーで
11のアングルからの確実な
撮影を可能にする
画期的技術NX Field

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1台のマスターカメラ(左)で10台までのリモートカメラ(中央)の確実なシャッター制御が可能。リモートカメラの状態はタブレット端末でリアルタイムに確認できる(右)。
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写真の誕生以来、フォトグラファーはカメラの可動範囲の広がりとともに次々と新しい視点を手に入れ、表現の多様性を獲得してきました。今までにないアングルからの写真は、新鮮な驚きを私たちに与えてくれます。無線による電波信号でシャッターを切ることが可能になり、フォトグラファーから離れた位置にあるリモートカメラを使った撮影は15年ほど前から試みられ、今や多くのフォトグラファーが撮影手段としています。大規模なスポーツイベントなどでは、何百台というリモートカメラが設置され、陸上100m走のゴールの決定的瞬間を、少しでも斬新なアングルで捉えようと、世界の通信社がしのぎを削っています。

大規模なイベントは、技術的課題が明らかになる場所でもあります。大量のリモートカメラのシャッターを切ろうと一斉に無線遠隔操作が行われるため、電波信号の混線でシャッターが切れていなかったり、ゴールの瞬間とは無関係の大量の写真がサーバーに送信され、必要な写真の配信が遅れたりと、リモートカメラ撮影には様々な問題がありました。

課題を解決するため、AFP通信社はニコンに技術開発を打診しました。提示した条件は2つ。1つは有線LANを使うこと。確実にリモートカメラのシャッターが切れ、撮影画像を迅速にサーバーにアップできるようにするためです。もう1つがリモートカメラの設定をスマートフォンやタブレット端末で行えるようにすること。AFP通信社によるテスト撮影と開発の試行錯誤を繰り返し、誕生したのがNX Field。今まで難しかったリモートカメラ撮影の設定・操作が劇的に簡単かつ確実になり、表現の可能性が飛躍的に広がります。1人のフォトグラファーが11のアングルを使って撮影できる時代がついに訪れたのです。

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NX Fieldシステム構成図

遠隔から確実にシャッター
が切れるだけじゃない
カメラ設定も変えられる。
必要な写真もより速く送れる

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NX Fieldの直感的なインターフェース画面。手元にあるカメラを使う感覚でリモートカメラを操作できる。

NX FieldでAFP通信社とニコンが目指したのは、リモート撮影の確実性を上げるだけでなく、フォトグラファーにとって使い易い道具にすることでした。自分の手で操作するカメラと同じ感覚でリモートカメラを操作できる、それを理想としたのです。

これまでのリモートカメラ撮影では、手持ちのマスターカメラからの信号がリモートカメラに確実に届いているかどうかが分からないというストレスがありました。NX Fieldでは、リモートカメラの状態はマスターカメラの液晶画面で確認できます。従来のリモート撮影では、被写体の位置を想定し、予めフォーカス位置を決める置きピンでの撮影しか方法がありませんでした。NX Fieldではオートフォーカスを使った撮影も行えます。

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フォトグラファーの出入りが難しい場所にカメラを設置することがあります。競技会場の天井付近のキャットウォークから俯瞰撮影をする場合などです。このような場面で、設定操作を行うスマートフォンやタブレット端末の携帯性が役に立ちます。設置場所は作業スペースが狭く、パソコンを開くのも大変です。スマートフォンなら嵩張ることもなく、ポケットから取り出して簡単に使うことができます。設置後にカメラ設定を変えたい場合にも、わざわざ設置場所に戻る必要なしに、遠隔でライブビュー画面を確認しながら望み通りのレリーズとカメラ設定が行えます。

また、手持ちのマスターカメラでシャッターを押すと、リモートカメラが全て連動して大量の写真を撮影していた今までとは異なり、必要な時だけ選択してリモートカメラのシャッターが切れるので、大切な写真だけがサーバーにアップされ、配信速度の向上にもつながります。

タイムラグを感じさせないリモート撮影で、
フォトグラファーの発想と
映像表現の可能性は未来に広がる

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ライブビュー画面を見ながら、異なる場所からの撮影が可能に。

NX Fieldのもう一つの利点はスマートフォンやタブレット端末でシャッターを押してから実際にシャッターが切れるまでのタイムラグを感じさせないこと。例えば、メディアの取材、編集拠点のような場所から、別々の競技会場に設置した複数台のリモートカメラのスルー画やカメラ設定をタブレット端末でチェックしながら、狙った瞬間の写真を撮ることも可能になります。撮影現場に入れるフォトグラファーの人数制限がある場合でも、写真の質を落とすことなく、様々なアングルでリモートカメラを設置し、遠隔から確実に撮影を行うことが出来ます。

AFP通信社が当初想定したのは、大規模なスポーツイベントなどでの使用です。簡単な設備で使うことのできるNX Fieldを実際に手にして、このシステムには思っていた以上の可能性があることを彼らは感じ始めています。カメラの前で何が起きるかを想像するのが得意なフォトグラファーの発想を活かせば、物理的に遠く離れた場所からでも写真を撮ることができます。5Gモバイル通信網を使えば、遠隔操作の距離は更に広がります。

NX Fieldが発想豊かなフォトグラファーの複数の目となり、今までに見たことのない映像を私たちに届けてくれる日は、すぐそこまで来ているのかも知れません。

共通する情熱で、
映像技術の新たな歴史を作る

AFP通信社 写真技術部門
フランソワ=グザヴィエ・マリット

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映像技術をより優れたものにすることは私の大きな情熱です。フォトグラファーもエディターも、それで仕事がはかどり、生産性も上がる。大きな技術的な達成に自分が関わったと言えるのは、素晴らしい気分です。NX Field実現の過程では、ニコンの技術者と直接膝詰めで協議することも出来ました。アイデアを実現できるパートナーと仕事ができるのは、特権的なことです。

AFP通信社 写真技術部門
アントナン・チュイリエ

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リモートカメラ撮影がその大きな可能性の扉を大きく開くまで、写真産業は15年待たねばなりませんでした。NX Fieldの登場が、まさに待ち望まれていたのです。この技術により、リモートカメラ撮影は、想像力のあるフォトグラファーであれば誰でもが使える道具になります。ニコンから提案されたNX Fieldを見たとき、これでリモート映像技術が変わると確信しました。

ニコン映像事業部 マーケティング戦略部 CS課(NPSグローバル)
鈴木 健司

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NPSの活動を通じて積み重ねてきたAFP通信との関係は、相互的なパートナーと呼べるレベルにまで進化してきました。明確な意見交換ができる信頼関係をベースにNX Fieldは誕生しました。定期的な意見交換を重ね、これからも一般のフォトグラファーにも便益をもたらす技術のアイデアを実現したいと思います。

ニコン映像事業部 開発統括部
武下 哲也

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ユーザーの方々に驚きを与えられる技術の提供を心掛けています。そのためには、技術が必要とされる背景に精通することが重要です。NX Fieldに関しては、何故それをやりたいのかを理解するため、NPSグローバル部門も交え、ダイレクトにAFP通信社とやりとりを重ねました。技術を追い込む最終段階は、まさにAFP通信社とワンチームになった2週間でした。

ニコン映像事業部 開発統括部
日野 光輝

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開発に携わり、比較的経験の浅い時期からプロフォトグラファーの生の声を聞く幸運に恵まれました。そこから学べることは計り知れません。ニコンには、やる気のある開発者は、どんどん外に出て生の声に触れて良いという雰囲気があります。NX Fieldもそのような環境だからこそ誕生できた技術だと感じています。

  • 所属、仕事内容は取材当時のものです。

公開日:2021年6月2日

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