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報道の最前線、
その先へ
パート1

フォトグラファーに新たな技術をもたらす
AFP通信社とニコンのパートナーシップ

報道写真の世界を長年支援してきたニコン。
世界4大通信社の1つAFP通信社とは1999年より良好な関係を築き、
2017年にはパートナーシップ契約を締結。
深い信頼と斬新な発想から、報道写真の未来を拓く技術が生み出される。

いちはやく、正確に、
24時間休みなく

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AFP通信社の編集室。世界各国のAFPスタッフフォトグラファーから送られる膨大な写真から、選りすぐりの3,000点を日々配信する。

通信社の仕事は時間との勝負。フランス パリ市に本拠を持つAFP通信社も、その活動の中核にあるのは速報性の追求。450名のフォトグラファーが、世界151ヶ国で、政治、スポーツ、交戦地帯、社会・環境問題、文化などあらゆる時事問題を取材し、1日当たり3,000点の良質な情報の写真を24時間リアルタイムで世界の主要メディアに配信します。
速度の競争に勝ち抜くため、AFP通信社は何十年にも亘って最先端の技術を使ってきました。AFP通信社写真部門技術部長フランソワ=グザヴィエ・マリット氏は語ります。「フィルム写真の時代、速報性とは、新聞や雑誌の締め切りに間に合うことを指していました。デジタルそしてSNSの時代である現在、速報性とはリアルタイムのことです。世界のトップ選手で競う陸上の100m走決勝レースを思い浮かべてください。AFPは10名のフォトグラファーと15台のリモートカメラを使って撮影します。計25台のカメラが10秒に満たぬ間に数千枚の写真を撮影し、リアルタイムに写真のトリミングや微調整を行うエディターに転送します。撮影中に画像送信できるニコンはこの点強力です。撮影から報道機関への納品までに要する時間は1分もかかりません。」
報道の最前線の競争には絶える間がありません。情報としての写真の質の向上と配信時間を短縮する技術を、AFP通信社は日々探究しています。そして、その中にはいつもNPS(ニコンプロフェッショナルサービス)の存在があります。

誰も考えつかなかった
新たな撮影方法の
実現、
それもNPSのサポート

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AFP通信社写真部門技術部長フランソワ=グザヴィエ・マリット氏(左)からD5への改善要望を聞くNPSフランスのルドビック・ドレアン(右)。

「AFP通信社のサポートはニコンがデジタル一眼レフD1を出した1999年から続いています。」と語るのは、NPSフランス スタッフのルドビック・ドレアン。
「ニコンの大切なクライアントとして、機材貸出し・修理など様々なサービスを提供し、AFP通信社が世界のどこででも撮影を滞りなく行えるよう、サポートしています。しかし、我々の関係は一方向的なものではありません。新たな映像表現を探求する強い情熱と創意に溢れた彼らから、映像技術を革新する発想の種を、我々は日常的に受取っています。世界規模で開催されるスポーツイベントなどの撮影を成功させるには、準備段階を含め、膨大な時間とエネルギーがかかります。AFP通信社は、通信社間での競争が激しいそのような場面で、ニコンの機材を使い、どうすればより良質な写真を撮影し、いちはやく世の中に提供できるかを徹底して考えています。その経験に裏打ちされた発想から我々は学び、今までになかった技術改良を行い、フォトグラファーを更にサポートすることが出来るのです。」
AFP通信社の提案から実用化された機能は数多くあります。優れた発想はNPSを通じ開発者に伝えられ、製品が改良されます。このようにして生まれる新たな技術はAFP通信社だけでなく、多くのフォトグラファーの撮影を助けています。ISOボタンを押しながらコマンドダイアルを回すとAUTO ISOに切り替わる機能なども、シンプルなものですが、一刻を争うフォトグラファーには大きなメリットなのです。

被写体捕捉の可能性を広げる、
D6のAFモードの開発

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D6のグループエリアAFカスタム機能を試すマリット氏(左)、開発を担当したニコン映像事業部開発統括部 日野光輝(右)。

パートナーシップ契約を結んだ2017年以降、AFP通信社とニコンは一層の意見交換を重ね、新たな撮影方法を可能にする技術の実現を目指しました。その一つがニコン史上最強のオートフォーカス性能をもつプロフェッショナルカメラD6に搭載されたグループエリアAFのカスタム機能です。
D6の開発を担当した設計部の日野は言います。「世界中の様々な場面での撮影を通して、カメラの使い方を熟知されたうえでのリクエストです。それぞれのAFエリアモードの得手不得手を知った上で、従来のAFモードでは難しい場合があることを示してくれました。あるスポーツをこのような角度で狙いたい。それも高精度のAF撮影で。選択できるAFエリアの縦横サイズを可変にすることで、今までAFでは難しかった被写体を、高精度のAFで追尾することが可能という、AFPの提案には驚きました。」
この機能では、例えば撮影者が、陸上競技の100m走で何コースの選手が1位になるか予想がつかない状況でも、確実に1位の選手を高精度のAFで捉えることができます。「要望を具体化するために、追加の質問をAFPに聞くこともあります。特に重視するのは要望の裏にある背景や、実際のこの要望を思いついた場面などです。開発者として、ユーザーに共感できるレベルまで技術を突き詰めていくことが大切だと考えています。」

共通する情熱で、
映像技術の新たな歴史を作る

ニコンフランス NPSフランス
ルドビック・ドレアン

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フランソワを筆頭にAFP通信社で働く情熱的な人々と日常的に仕事ができるというのは、NPSにとっては並外れた経験、まさに冒険です。AFP通信社は通信報道の世界では誰もが仰ぎ見るような存在で、国際的にも大きな影響力を持っています。私にとって、彼らと意見交換を重ね、深い信頼に基づいてサービスを提供するのは、真の友人をサポートするようなもので、単なる業務以上の大きな意味を持っています。

AFP通信社 写真技術部門
フランソワ=グザヴィエ・マリット

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NPSとAFP通信社は、写真の未来を探り、映像技術の歴史の創造に役立とうという情熱を共有しています。私達が目指すのは、生み出された技術的な解決策が、自分たちの想像を超えた範囲まで用途を広げることです。その目標に対してNPSと我々の考えは完全に一致しています。

ニコン映像事業部 開発統括部
日野 光輝

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開発者が立ち会うことのできない様々な場面にAFP通信社の方々は遭遇しています。彼らから私たちに寄せられるカメラに対する要望のひとつひとつは、その点で大きな重みをもっています。また、時には激しいディスカッションになることもありますが、ニコンに対する大きな期待があるからこそと思っています。フィードバックは開発者にとって今後のカメラの将来を示す大きな道標だと思います。

  • 所属、仕事内容は取材当時のものです。

公開日:2021年4月26日

Nikon Professional Services
D6