STORIES

食の安全と安心に

ジャムの製造ラインで異物や夾雑(きょうざつ)物の
自動検査を実現

ニコンがアヲハタ株式会社様と共同開発した異物検査装置は、
ジャム・フルーツスプレッド分野における
異物・夾雑物(原料となるフルーツのヘタ・葉・枝・種など)を検出し、
製品の安全・安心に貢献しています。

美味しくて安全な
ジャムづくりをお手伝い

私たちが一生の間に食事をする回数は、平均して約9万回と言われています。80歳までに1日3回食べると仮定した上での数字です。食は命を支えるだけでなく、食べる喜びを通じて生活に彩りももたらしてくれます。それだけに、一食一食がとても大切。できるだけ美味しくて安全なものを食べたいと願うのも自然なことではないでしょうか。

食の安全・安心に対する意識は世界的にも高まっています。食品業界でも、さまざまな手法で品質管理に力を注いでいます。こうした中、ニコンは光学技術とAIを組み合わせた異物検査装置により、これまでなかった画期的な品質管理ソリューションを提供。美味しくて安全なジャムづくりをお手伝いしているのです。

異物を、分光技術で判別

もちろんこれまでも食品業界では、安全な原材料の確保から製造時の異物混入防止まで、入念に対策されてきました。金属検査機やX線検査機などを使って金属片やプラスチック片などは検出できますが、有機物(動植物を構成している物質)の検出はほとんどが人の目に頼っている状況でした。そこで注目されたのが、ニコンの分光技術です。

分光技術とは、物体の反射光などのスペクトル(光の波長成分の強さの分布)を計測し、その情報をさまざまな分野に応用する技術です。私たちは、物体が反射した波長の光を「色」として認識します。いちごが赤く見えるのは、いちごが赤い光(長い波長の光)を多く反射し、それ以外の光(短波長~中波長の光)を吸収しているからです。どの波長を反射し、どの波長を吸収するか(分光反射率特性)は物体ごとに異なっています。

そこで物体の分光反射率特性を測定し、適切な光学フィルターを選ぶと、例えば私たちの目では見分けの付きにくい塩とグラニュー糖も見分けることができるようになります。

  • 特定の波長の光を透過したり反射したりするフィルター

ディープラーニングの活用で
検出精度が向上

ジャム・フルーツスプレッドの製造においては、原料に混入した異物や夾雑物を取り除く工程があります。これまでは人の目による検査を行ってきましたが、作業する方の身体的負担が大きく、検出精度にもバラつきがあるなど、いくつかの課題がありました。しかし、原料の種類の多さや果肉の形状により、これまで自動化は困難とされてきました。

ニコンでは、アヲハタ様からの依頼を受け、2015年から基礎実験を重ね、異物・夾雑物を自動検査できる装置の共同開発を開始しました。原料と異物・夾雑物サンプルの分光反射率特性を測定し、両者の違いをもっとも見分けやすい光学フィルターの組み合わせを選択。さらに、撮影画像から異物・夾雑物を検出する精度を向上させるため、AIの一種であるディープラーニングを活用しました。

こうして完成したのが、ジャム・フルーツスプレッド用の異物検査装置です。ジャム・フルーツスプレッドの製造においては、業界で初めて異物・夾雑物の自動検査を実現。アヲハタ様では、この異物検査装置を導入することで、検出精度の向上と作業する方の負担軽減を達成しています。

異物検査装置の原理を応用すれば、他の食品でも製造ライン上で異物検出が可能になります。さらに食品だけでなく医薬品などの検査にも可能性は広がります。これからもニコンは、光学技術やAIを応用し、幅広い分野で活用できる検査装置の開発に力を注いでいきます。

お客様に寄り添い、
食の安全安心に貢献。

写真左から、中井 悠貴、谷 善朗、吉留 亮介

カスタムプロダクツ事業部
谷 善朗

チームリーダーとして開発プロジェクトを率い、お客さまの課題をチームとともに解決してきました。2015年にアヲハタ様から当社の分光技術を用いた自動検査装置の実現可能性について打診がありました。実験室レベルでは分光技術が使えそうだとの目処が立ち、2016年から仕様検討に入りました。実験を重ねて初号機(試作機)を実際の製造現場に持ち込んだのですが、実験室とは環境も違うので、思うような検出精度が出せませんでした。そこでAIによる画像認識の手法を、人がパラメータを定義する機械学習から、AIが自ら学習していくディープラーニングに変えたところ、検出率が飛躍的に向上し、誤検出も少なくなって実用化の域に到達することができました。

私はメカ設計者で、自分の書いた設計図が製品としてカタチを持ち、実際に触れられるようになることに醍醐味を感じます。その上、お客さまに喜んでいただければ最高です。これからも、そんな製品やシステムを開発していきたいと考えています。

カスタムプロダクツ事業部
吉留 亮介

初めて手掛けた製品が今回の異物検査装置で、電気設計とソフトウェアを担当しました。開発にあたって苦労したことが二つありました。一つはフラッシュの光源です。光量、均一性、耐久性に優れた光源がなかなか見つかりませんでした。光源メーカーとも協力して試験、解析を実施し、ようやく使えそうな光源を見つけたときにはホッとしました。もう一つが、長時間使用するとまれにソフトウェアの処理が重くなり、撮影できなくなる不具合への対応です。初めての経験でしたのでとても焦りました。試験導入後の状況をお客さまから丁寧にヒアリングし、ログを解析して最適化し、安定させることができました。

開発は、仕様の策定から設計、製造部のフォロー、現地での調整など、一連の流れにかかわることができるだけに、やり遂げた達成感があります。この事業部から、ニコンの柱となるような製品を生み出したいと考えています。

カスタムプロダクツ事業部
中井 悠貴

営業担当としてアヲハタ様との窓口となり、打合せなどで対話を重ねてきました。ご要望や想いを実現するために、社内やアヲハタ様の外部協力会社との調整にあたり、仕様検討からスケジュール管理、現地での立ち合いなど多岐に渡りサポートさせていただきました。

アヲハタ様は品質にこだわり、食の安全・安心をとても大切にされています。その姿勢に寄り添い、細かいところまで対応することを心掛けました。今回の装置は、アヲハタ様はもちろん、同じ職場のメンバーや、他の部署の人々の知見や協力があって完成させることができました。これからもニコン社内の技術を活用し、グループ内で横断的に協力しあって、お客さまに喜んでいただける製品を提供していきたいと思います。

  • 所属、仕事内容は取材当時のものです。