STORIES

高精度な非破壊検査で
ものづくりをサポート

安全・安心を見守るX線検査システム

部品の品質チェックを通じて、航空機や自動車の信頼性を支える検査用CT装置「XT H 450」。
ものづくりや研究開発の現場で、X線を駆使して安全・安心な社会に貢献しています。

部品の信頼性が支える航空機の安全

旅行や出張などで航空機を利用される方も多いと思います。その航空機、いったいどのぐらいの部品で構成されているか、ご存じですか? 中大型旅客機で、実に約300万部品とも言われています。想像もつかない部品点数ですが、「もっとも安全な乗り物」と言われる航空機では部品それぞれに最高レベルの信頼性が求められます。それだけに、各部品の製造工程では、入念な品質チェックが欠かせません。

中でも重要な役割を担う部品の一つが、ジェットエンジンの燃焼器で作られた高温高圧の燃焼ガスが通過する「タービンブレード」です。設計通りの形状に製造されていないと、エネルギー変換効率が悪くなるばかりか、時には思わぬ故障を引き起こす原因にもなりえます。また、約1000℃もの高温にさらされるブレードの肉厚は、翼面全体の最適強度と冷却のバランスを考慮して設計され、誤差の範囲が厳しく決められています。もちろん割れ目や異物などの構造欠陥は、ブレードの寿命を縮めるリスクとなります。形状や肉厚が正確か、構造欠陥がないか、厳しくチェックする必要があり、製造プロセスの中で全品検査されています。

こうした検査は一般的に物体の内部構造までX線で可視化し、その画像データを元にCT機能で寸法を三次元形状として定量化できるX線/CT(コンピュータ断層撮影)技術を利用して行います。しかし、タービンブレードは単結晶合金など材質が高密度なため、一般的な検査システムでは高精度な検査が困難でした。そこで活躍しているのが、高出力のX線を発生させるX線源を搭載したニコンの検査用CT装置「XT H 450」です。

非破壊非接触でものづくりの品質をチェック

XT H 450の特徴の一つが、マイクロフォーカスX線源を搭載しているので、拡大しても詳細な画像を取得できることです。しかも世界唯一の高出力なX線源(450kV)のため、高密度な金属でも高精度に検査できます。こうした特徴によって、タービンブレードの内部構造を詳細に解析できるのです。

XT H 450

また、被検物に触れたり、被検物を壊したりすることなく検査(非接触非破壊検査)できるのも、大きな特徴です。 製造プロセスの中に検査工程を組み込むことができ、しかもブレードの自動合格/不合格判別機能も備えているため、品質の担保と生産性向上を両立できます。さらに、近年は航空機の金属部品の製造にも3Dプリンターが利用されるケースが増えてきており、そこでの活躍も期待されます。こうした数々のメリットと、ニコンが航空産業で蓄積した 知見により、今、活躍の場がさまざまな用途へと広がりつつあります。

鋳物のCT画像

その一つが自動車産業です。自動車は部品点数こそ航空機の100分の1の約3万点ですが、その生産台数は主要民間ジェット旅客機の60,000倍以上となる全世界で年間約1億台。1年間に作られる部品点数は航空機を上回り、もちろん一つひとつの部品に高い信頼性も求められます。同時に省燃費のための軽量化も進み、たとえば鋳造部品であるエンジンブロックは肉厚の薄さが極限まで追求され、もしも内部構造に欠陥などがあれば壊れるリスクは従来以上に大きくなっています。自動運転実現に向けては益々その重要性が高まっています。鋳造部品や溶接位置の品質を非破壊で検査できるXT H 450は、こうしたエンジン鋳物の製造検査やターボチャージャーの研究開発などでも活躍しています。

  • 2017年の世界全体の4輪車生産台数9729万9000台(日本自動車工業界)

品質を見守る目として、さらに広がる活躍の場

ガソリン車から電気自動車(EV)への転換を図るEVシフトが世界的に進む中、自動車産業では電気モーターを使った自動車の開発と実用化が急ピッチで進んでいます。そのEVの要の一つである電池は、いったん製造すると分解できず、しかも高密度な金属でできた部品です。また、やはり要となる電気モーターにも高密度の金属が使われています。XT H 450は、こうした次世代自動車の品質チェックにも活用できます。

非破壊で効率よく高精度な検査を可能にするニコンのXT H 450。これからもさまざまなものづくりの現場で品質チェックに厳しい目を光らせ、暮らしや社会の安全・安心に貢献していきます。

多彩な分野の未来も見つめるX線/CT検査技術

産業機器事業部(Nikon X-tek Systems Ltd.
David Bate

X線/CT検査システム開発は、ソリューション提案できることにやりがいを感じています。もちろん、解決するまでには時間がかかり、明確な解が存在しない中で、分かるまで実験を続ける苦労はあります。でも「タマネギの皮をむくように」とよく言っているのですが、大きな一つの問題をいくつかの小さな問題に分けて、小さな成功を積み重ねられるように心掛けています。

自動車産業への参入にあたっては、まず自動車レースの最高峰であるフォーミュラ1(F1)参加チームにアプローチし、現在もF1カーの開発に生かされています。最高峰であり技術の粋を追求するF1で得られた経験は、今後の製品開発の礎となると確信しています。

この技術が貢献するのは、ものづくりだけではありません。考古学や歴史学、美術など、学問の分野にも広がっています。たとえば、地質学分野。鉱物の内部を調べてバーチャルモデルを再構成できることが高く評価されています。また、土壌科学では、植物の根の成長検査に活用されています。いずれもさまざまな産業との接点となりうるので、将来のビジネスにつながっていく可能性は大いにあるでしょう。

  • Nikon X-Tek Systems Ltd.:X線CTに関する製品の開発、製造および三次元計測に関する製品の製造を担当
  • 所属、仕事内容は取材当時のものです。