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となりにロボットがいる
未来へ

ロボットの進化を支え、ヒトの未来を開く

ロボットの関節などの回転角度を検出するセンサである「エンコーダ」。
光利用技術や精密技術など、ニコンならではの技術の結晶が、
「ロボット技術」の発展と進化に大きく貢献しています。

多様な分野で暮らしを支えるロボット

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接客用ロボットやペットロボット、ヒューマノイド型ロボットなど、気がつけば私たちにとって、ロボットはずいぶん身近な存在になってきました。
それどころか、ものづくりの分野に目を向ければ、製造はもちろん、流通倉庫での商品の取り出しや仕分け作業でも、まるで生き物のような滑らかな動きで行う産業用ロボットがすでに大活躍しています。私たちの暮らしは、ロボットなしにはもはや成り立たなくなってきているのです。

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人手不足などを背景に、工場の自動化や省人化に伴う産業用ロボットの需要は、世界的に拡大しています。ニコンは、ロボットアームなどの動きの制御に欠かせない「エンコーダ」と呼ばれるセンサの提供を通じて、ロボット産業の発展に貢献しています。

正確な動作制御に欠かせない
「エンコーダ」

エンコーダは、人間で言えば“神経”に相当する部品です。ニコンのエンコーダは、主にロボットアームの可動部などの関節に組み込まれ、その回転角度をきわめて精密に検出し、デジタルデータとして出力することで、ロボットの正確な動作をサポートしています。特に、絶対位置を検出できるものは「アブソリュート型」と呼ばれ、産業用ロボットに多く採用されています。

多回転アブソリュートエンコーダ「MAR-M50A」では、パターンが超精密に描かれたディスクにLED光を照射し、反射光によって得られた電気信号から位置を検出するとともに、磁気センサでディスクが何回転したかをカウント。得られた電気信号に処理を加えることで、高分解能を実現しています。

地球(円周4万km)にたとえれば約2.4m間隔で位置が分かります。これこそがロボットの精密な動きを実現するカギとなっているのです。

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多回転アブソリュートエンコーダ「MAR-M50A」

さらに受光素子とLEDを一体化した反射型エンコーダを実現することで、薄型化(高さ12.74mm)も達成。また、位置を絶対値で検出するためのパターンとして、ニコン独自開発の「M系列パターン※1」を採用。従来の高分解能エンコーダは何列ものパターンが必要なため大型化しがちでしたが、M 系列パターンは1列でOK。外径35mmと、近年の産業用ロボットやヒューマノイドロボット等に欠かせない小型化を達成しています。

「光利用技術」と「精密技術」。エンコーダは、ニコンがカメラや露光装置等を通じて長年培ってきた二つの基礎技術の、まさに結晶と言える製品です。

  • ※1maximal-length sequences:最大周期系列。MAR-M50Aでは1周に512番地が存在し、どれ一つとして同じパターンがないため、絶対位置を把握できる。

ロボットがあたりまえにいる社会を

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ものづくりを支える産業用ロボットは、さらに進化しようとしています。その一つが、組み立て作業や搬送工程などで人と同じ空間で一緒に作業する「ヒト協調ロボット」です。これまでは安全性の面から、人とロボットは完全に隔離された環境で作業をしていましたが、これからの労働力不足や多品種少量生産対応などの生産課題を解決する手段として注目を集めています。

ヒト協調ロボット実現のキーパーツとして期待されているのが、ニコンが開発している「一体型アクチュエータ」です。これはエンコーダだけでなく、モータやモータドライバ※2、減速機※3などロボットの関節ユニットとして必要なパーツを一体化した製品で、ロボット技術の総合展示会などに参考出品し、好評を博しました。

ニコンの一体型アクチュエータは、減速機の入力側と出力側の2カ所にエンコーダを実装するダブルエンコーダ構成。これにより高精度位置決めを実現し、従来以上に高度な作業を可能にしています。また、モータドライバの一体化やケーブル類を収められる中空構造などにより、省スペース化も実現。ニコンでは一体型アクチュエータの完成度をさらに高め、ロボットシステムインテグレータ※4などに対して設計自由度の高いロボットづくりの提案を進める予定です※5。また、今後ますます身近な存在になるサービスロボットやヒューマノイドロボットへの応用も視野に入れた研究開発も進めていきます。

  • ※2モータを駆動・制御する装置。
  • ※3モータの回転速度を歯車などで減少させ、大きな力に変える装置。
  • ※4導入現場のニーズに応じてロボットシステムを構築する会社。
  • ※5一体型アクチュエータは、インテリジェントアクチュエータユニット「C3 eMotion」として2019年12月に発売しました。

ニコンらしい製品で
世界のトップブランドをめざす

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ニコンの一体型アクチュエータを囲んで(写真左から、引地哲也、坂元猛志、湯本一樹、板橋春佳)

エンコーダ事業室
引地 哲也

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エンコーダに初めて触れた時の感動は今でも忘れません。すごい技術だと思いました。以来、それをどう進化させるかを追求し続け、完成度を高めることに努めてきました。特にキーパーツであるLEDと受光センサの最適化を行ってエンコーダの性能アップに貢献してきました。また、開発したエンコーダが様々なロボットに搭載されてモーションコントロール※6の役に立っていることを嬉しく思います。

信頼性と生産性まで考えた設計を実現できたのも、議論を重ねられる風通しの良い一体感ある組織だからだと思います。今は一体型アクチュエータの開発にも注力しています。

  • ※6ロボットの動作を制御すること。

エンコーダ事業室
板橋 春佳

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今は直線軸の位置を検出する「高分解能型リニアエンコーダ」の開発に携わっています。まだ勉強勉強の毎日ですが、チームで開発しているので、いろいろなバックグラウンドを持つ人に相談できることが困難を乗り越える力になっていると感じます。

ニコンのアブソリュートエンコーダは、光利用技術と精密技術の結晶ですが、M系列をアブソリュートエンコーダに応用するアイデアを出したのは、ニコンの大先輩です。私も同じように、まさにニコンならではの製品に、いつか自分のアイデアを盛り込めるよう、なにか一つ突出したものを追求していきたいと考えています。

エンコーダ事業室
湯本 一樹

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新たな取り組みとなる、一体型アクチュエータの開発に携わっています。
未知の領域に挑戦することで直面する困難も明日の糧になっており、まだ世の中にないものをつくるという感覚を持って開発することに、大きなやりがいを感じています。

私はエンコーダ事業の発展がニコンの市場価値をさらに高め、社会貢献にも繋がっていくと考えます。世界中のあらゆる場所で様々な製品に私たちのエンコーダと一体型アクチュエータが採用されること、そして、サービスロボットの市場にまで普及していくことが私の夢です。

エンコーダ事業室
坂元 猛志

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マーケティングセールスを担当しています。
技術者同士はもちろん、開発・品質保証・生産計画・製造・営業が一枚岩となることが、最高の製品づくりの源となっています。

現在、ニコンのエンコーダ事業は国内ではすでに多くのお客さまから大きな信頼をいただいてます。数年前に進出したアジアではさらなる拡販を進めて、2017年にはヨーロッパへも進出しました。
次なる目標は北米の新規開拓です。
エンコーダを通じて世界中の多くの人を幸せに。それが私たちの願いです。

  • 所属、仕事内容は取材当時のものです。
  • エンコーダ事業室は2020年4月にコンポーネント事業室と統合し、デジタルソリューションズ事業部となっています。

公開日:2018年6月28日