NIKKOR Z レンズ

2019.10.29レンズ

「新次元の光学性能」を物語るデザイン伝統と革新に磨かれた新たなカタチ

大口径のマウントから生み出される、ボディーとレンズ

Z マウントシステムの命である大口径のマウント。そこには、映像の新たな歴史を築くZ マウントシステムの「新次元の光学性能」というコンセプトが込められています。このコンセプトをどのように表現するか、その問いからデザインはスタートしました。

その答えとして私たちが描いたストーリーが「核であるマウントから、ボディーとレンズが生まれる」というものでした。ボディーもレンズも、システムの心臓部に収れんしていくように作り込み、マウントを強調することで、新次元の光学性能を表現しようとしたのです。
そのためには、レンズ、マウント、ボディーの一体感が不可欠です。開発の初期から、開発部とレンズ、ボディーそれぞれのデザインチームが一丸となり、全体の一体感を検討していきました。接合部であるマウント周囲の色や質感を合わせるなどして、Z マウントシステムのデザイン上のアイデンティティが出来上がったのです。

ほかにも、コントロールリングの部分などデザインチームと開発部が一丸となることで、多くの相乗効果がありました。

何よりも撮影者を第一に考えるニコンの思想は、NIKKOR F レンズに続き、NIKKOR Z レンズでも色濃く表れています。長い年月を経ても消えづらい焦点距離などの表記、撮影者から視認しやすいディスプレイと周囲の処理、ひと目見ただけで識別できるスペック表記など、私たちが脈々と受け継いできた操作性への知見は随所にちりばめられています。
今回はそれだけにとどまらず、精密感というキーワードを加え、NIKKOR Z レンズが持つ新次元の光学性能を体現しています。抜群の操作性を備え、かつ精密感のあるレンズとするために、私たちは慎重に検討を重ねていきました。

そのひとつの例としてローレット形状の検討があげられます。これまでのNIKKOR F レンズは、グリップ性の高さで好評をいただいていました。今回はそこに新たに精密感という価値を盛り込むため、一から形状を模索していきました。

検討段階では実に多くのアイデアを考え、ユニークなものもたくさん出ました。それらをもとにモックを作っては、デザインチームだけではなくあらゆる部署の厳しい目で評価していきました。特に操作性に関して、とにかくこだわりの強い人がたくさんいます。彼らの熱い意見と、デザインとして譲れない部分をぶつけ合わせながら、長い時間を掛けて操作性と精密感を追い求めていきました。
何度も試行錯誤を重ね出来上がったのは、これまでNIKKOR F レンズでも抜群の操作性を発揮してきた台形ローレットを、以前より数段細密に並べたものでした。これまでの財産を継承し、新たな価値で洗練させることとなりました。

装飾を削り、洗練されたデザインに

プロダクトデザインとして、操作性を最優先に考えるべきことは確かです。一方で、思わず欲しくなってしまうようなデザインにすることも、私たちの重要な使命だと考えています。これまでのNIKKOR F レンズは、その役割を装飾に負わせていましたが、NIKKOR Z レンズでは、撮影者がより撮影に集中できるよう、ノイズとなりうる装飾性を削っていき、現代的ですっきりとした造形を狙っていきました。
さらにS-Line では、品質への自信を表すダークシルバーのリングを配していますが、リングの輝きが撮影するときのノイズとならないように、撮影者側からはあえて隠れるようにし、撮影に集中できるようにしています。
ニコンらしさは、そうしたこだわりや、また何よりも手に持ったときに分かる操作感の中にあるものだと私たちは考えています。外観で過度に主張しなくても、触れば実感していただけます。
またS-Lineのレンズでは、さらに精密感を醸成するため金属の質感を随所に用いています。今でも世の中の一部のレンズはそうですが、かつてレンズはひとつの金属塊を削り出し、非常に精巧に作られていました。素材の強度、重厚感そして安定感、加工の精確性から、金属は精度と品質の高さを想起させます。その歴史を引き継いだ金属のパーツを配し、質感のコントラストを出しながらも、NIKKOR Z レンズの精密感を効果的に表現しています。

Z マウントシステムをピュアに体現したNoct

かつてニコンが開発した、極めて明るいレンズNoct(ノクト)。その名前を継承し、今回のZ マウントシステムの圧倒的な光学性能を体現するレンズがNIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct。ニコンの光学技術のすべてを注ぎ込んだ、開放F値0.95という驚異的な明るさを誇るレンズです。
Z マウントシステムの大きな口径も、この明るさを実現するために決められています。「Z マウントシステムでしか出せない性能を出そう」。デザインチーム内ではそう決意し、理想を突き詰めていきました。Noctは、まさにZ マウントシステムの象徴的存在と言えます。

初めて設計部から上がってきたモックを見たとき、「おお!?」と思わず驚きの声を漏らしてしまいました。それは、予想していたよりもはるかに大きなボリュームのものが上がってきたということもありますが、何よりNoctがモックの段階で既に尋常でないパワーを放っていたからです。カットモデルを見て、そのボリュームとパワーに納得しました。そこにはぎっしりとレンズが詰め込まれて、その密度が放つ圧倒的な存在感から、光学性能の究極を追い求める設計者の揺るぎない気概を受け取りました。そのパワーを削ぐことのないよう、そしてその凄みをどう増幅させるかが、デザイン上の課題でした。

NIKKOR Z レンズの最上位の品質感を表現するために掲げたのが「クラフトマンシップ」というキーワードでした。それは、Noctが実際に金属塊を切削し、丁寧かつ精巧に作られているという製造方法に由来しています。そしてこのレンズの性能を発揮するためには、強度・真円性などを十分に満たすような極めて高い精度が求められます。そのため、一本一本を切削して丁寧に仕上げました。このようにNoctの光学性能はその製造方法に裏打ちされており、デザインでもそれを表現しています。
さらにクラフトマンシップを感じていただくため、“Noct”の筆記体のロゴを刻印しています。すべての表示を刻印にして入れることで、まるで人の手によって一本ずつ作られたような丁寧さを醸成しています。
3D上での検討を終え、より製品に近く、質感も再現されたデザインモックを手にしたとき、再び驚きました。なぜなら、そこにはさらに凄みを増したNoctが、初めて目にしたときの何倍ものパワーを放っていたからです。

NIKKOR Z レンズは始まったばかり

マウントが新しくなることは、ニコンにとって60年ぶりの出来事です。おそらく今後の人生で出会うことのできないプロジェクトに携われて素晴らしい経験ができました。ただ、ボディーも含めて、Z マウントシステムをこれからどのように進化させていくかが肝です。今後の展開にも期待してください。(馬場)

今後も登場するユニークなレンズたちにどうデザインで特徴を付けていくかを楽しみながら進めています。NIKKOR Z レンズはまだまだ始動したばかり。これからもどんどんいいものへと進化させていきたいと思っています。(二階堂)

誇りになる仕事に携われました。また、Noctのデザインでは、チームの全員が高いモチベーションの中で理想を追求していけました。NIKKOR Z レンズの持つ凄みを、象徴であるNoctから存分に感じていただければと思います。(今水)

プロダクトデザイン担当 左から二階堂 豊、馬場 健司、今水 誠

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