パートナーとのビジョン共有が支える製品づくり、社会づくり

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より良い製品をつくるだけでなく、社会をより良く変えていくために、ニコンでは、製品の原材料や部品を供給してくれる“調達パートナー”と、CSRの考えを共有し、その実践に向け、共に取り組みを進めています。

パートナーとの強固な協力体制がものづくりの基盤

ニコンのものづくりでは、製品の製造・組立のほとんどを自社グループ内で行っています。このため、取り扱う原材料や部品は、金属、樹脂、光学部品、電子部品など、多岐にわたり、その調達は、国内外のさまざまな取引先に支えられています。

一方、社会に目を向けると、ものづくりに関して、金属材料となる鉱物の採掘現場をはじめとした人権問題や、工場における労働環境、化学物質管理、地球温暖化対策などの課題が高い注目を集めています。また、これらの課題は、グループの枠を超え、取引先、さらにその先へとサプライチェーンをさかのぼって取り組みを進めていくことが求められています。

ニコンが、高品質で、社会に役立つ製品やソリューションを提供する過程において、これらの社会課題にも真剣に向き合い、CSRに取り組んでいくためには、取引先の協力が不可欠です。この認識から、私たちは、原材料や部品を供給してくれる取引先を“調達パートナー”と呼び、相互理解を深め、強固な信頼関係を築く努力をしています。そのうえで、CSRについても一緒に取り組みを進めるよう協力を仰いでいます。

世界に広がるニコンのサプライチェーン

ニコングループ 調達パートナー

段階的な取り組みでビジョンを共有

私たちが最初に行ったのは、「ニコン調達パートナーCSRガイドライン」(以下、ガイドライン)の制定と、その説明会の開催です。調達パートナーの協力を得るためには、私たちの思いに共感してもらうことが重要だと考え、まず、ガイドラインによって、CSRの考えや調達パートナーに求めることを文章化し、その内容をしっかり理解できるよう、説明する活動を始めました。

しかし、この活動は、試行錯誤の連続でした。はじめて説明会を行った2007年当時の日本では、「CSR」という言葉に馴染みのない人も多く、その解説からスタートしなければなりませんでした。

説明会を開催する一方で、ニコンでは、調達パートナーの調査も進めてきました。この調査も、はじめはガイドラインの浸透に主眼を置いたものでした。しかし、調達パートナー一社一社と対話を重ねながら、ガイドラインの理解度の確認、実際の取り組み状況の把握へと、活動を段階的に発展させてきました。

そして、2015年、これまでの活動をさらにステップアップさせ、改善を促すための仕組みにしていくために、ガイドラインを廃止し、新たに「ニコンCSR調達基準」(以下、調達基準)を制定しました。

中国における調達パートナー向け「CSR調達活動説明会」
タイにおけるグループ会社従業員向け説明会

「調達基準」は同じ方向に進むための共通言語

調達基準は、言わば、私たちニコンが世界中の調達パートナーと同じ方向に進んでいくための“共通言語”です。

ニコンの主要製造拠点は日本、中国、タイにあり、調達パートナーの多くもこの3カ国で操業しています。商習慣の異なる国もありますし、地域によって抱えている課題や「なぜ企業が社会的責任を果たさなければならないか」というCSRの受け取り方も違います。活動を日本以外にも広げていく中で、既存のガイドラインは、主に日本企業を想定した考え方になっていたこともあり、“ニコンが求めるレベル”が曖昧で伝わりにくいと感じるようになりました。また、ガイドライン制定当時はまだ顕在化していなかった新たな社会課題への対応も必要となっていました。そこでこれらの問題をクリアすべく作ったのが、調達基準です。

ニコンでは、この調達基準に基づき、セルフチェック形式のCSR調査と、監査員が現場を直に確認するCSR監査を行っています。また、それらの結果を分析して、調達パートナーの改善活動を支援しています。調達パートナーに納得し、実際の行動にうつしてもらううえで大切なことは、やはり、対話です。

ニコンが取り組みをはじめて10年以上経った今でも、調達基準を守ることの必要性に懐疑的な反応を示される調達パートナーがいます。このような方に対しては、私たちの設けた基準が、そもそもあなたの会社やその従業員たちの生活を守るものであると伝えています。例えば、基準の中には、“緊急時の避難路を表示する”というような細かなことも含まれているのですが、「火事になるとあなた自身が困りませんか?」など、自分の問題として認識してもらう工夫を続けています。

この調達基準が“共通言語”として機能し、調達パートナーの活動が着実に進むように、私たちは、説明会に参加してくださった方だけでなく、その部下や他部署の方など、より多くの方に、この調達基準を理解してもらいたいと考えています。そこで、インターネットを利用した個人レベルでの学びの機会を広げる取り組みも進めています。

主な活動の歩み

  1. 2007年:ニコン調達パートナーCSRガイドラインを制定
  2. 2008年:国内の調達パートナーに対し、ガイドライン説明会
    CSR調査票によるアンケート調査を開始
  3. 2009年:ニコンおよび国内グループ会社と直接取引を行う海外調達パートナーに対し、ガイドラインを提示し、アンケート調査を開始
  4. 2010年:海外グループ会社とその調達パートナーに対し、ガイドライン説明会およびアンケート調査を開始
  5. 2015年:ガイドラインを廃止し、ニコンCSR調達基準を策定。CSR調査およびCSR監査、改善の要請や支援を開始
  6. 2019年:調達パートナー向けの教育ツールを活用した学習支援に着手
    調達基準遵守率の管理指標を設定し、取引条件に組入れ開始

CSR調査・CSR監査を受けていただいた調達パートナーの声

ニコンによるCSR調査とCSR監査を通して、労働安全衛生やコンプライアンス面における自社の弱点に気づくことができました。現在、組織的に課題の改善に取り組んでいますが、ニコンの定期的なサポートにより、停滞することなく活動を継続できています。改善活動を通じて、CSRへの意識が強まり、具体的な取り組みを実施していくきっかけになりました。これからもグローバルな視点で自分たちに何ができるのかを追求していくとともに、ニコンとのパートナーシップを深めながら、より良い製品づくりと社会づくりに貢献していきたいと考えています。

伸和コントロールズ株式会社

これからも世界のパートナーたちと共に

誰もが納得できる調達基準を作成するため、世界のCSRの動向を追ったり、いくつかあるグローバル基準を調査したり、ニコンの行動規範との整合性を確認する為に社内の専門部署の意見を取り入れたり、それまでのガイドラインとの齟齬が無いように確認したり、最大限の努力を払いました。徹底した準備を通して形になったからこそ、私たちの調達基準は、現在のグローバルな調査・監査活動でも機能しているのだと思います。今後は調達パートナーだけではなく、その先の取引先、つまり、私たちの調達パートナーに資材を納めている会社などにも、直接的な働きかけをしていきたいと考えています。ニコンの製品は、原材料の製造から販売に至るまで、多くの会社が関係しています。社会課題の解決を見据えながら、それらの会社が、例えば自分たちの抱える長時間労働や連続勤務といった問題に気づき、改善していくためのサポートをしっかりと続けていくことが、グローバル企業である私たちの責任だと感じています。

生産本部 調達部
渥美しのぶ

ある国では、地方から出稼ぎにきている従業員が多く、「彼らは収入を減らしたくないから労働時間を厳しく制限してほしくないと考えている」という意見をいただきました。そこで、その国の説明会の際に、長時間休まずに働き続けると過労死のリスクが高まるというデータを示し、みんなが健康に働き続けられる環境が整っている会社こそ、高い品質と安定した生産が維持できるという話をしました。このように、国や地域によって説明の際に強調するポイントや示す事例を変えるなど工夫を重ねることで、少しずつ、ニコンの考え方や調達基準への理解が深まってきているように感じます。実際、ニコンが監査と改善支援を行った調達パートナーの担当者から、「調達基準に沿って改善を続けたら、会社が良くなりました」という前向きな声を聞くことが増えており、手応えを感じています。

生産本部 調達部
飯島一成
  • *所属、仕事内容は取材当時のものです。

Outlook目標はすべてのパートナーの調達基準遵守率向上

私たちのいまの目標は、すべての調達パートナーの調達基準遵守率をニコンの管理指標以上に高めていくことです。そのためにニコンでは、CSR調査やCSR監査を継続して実状をしっかり把握し、遵守率が低い調達パートナーの改善を着実にサポートしていきます。

そして、この取り組みを調達パートナーの取引先にも広げることを考えています。

ニコンの調達基準は、サプライチェーンのCSRに関する国際基準に沿っており、労働や安全衛生、環境など、世界中どこであっても、誰であっても、共通して守るべき内容となっています。

私たちニコンは、調達基準に共感し、共に取り組みを進めるよう、調達パートナーに働きかけ続けていくことで、より良い社会をつくり、皆さまの生活をより豊かにする製品を生み出していく、質の高いサプライチェーンを築いていきます。

関連するSDGs

  • 8 働きがいも経済成長も
  • 12 つくる責任 つかう責任

持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)

国際社会が持続可能な発展のために2030年までに達成すべき目標で、国連総会が2015年に採択した。貧困、飢餓、教育、気候変動に関してなど、合計17の目標からなる。