環境

重要と考える理由

気候変動の影響がより顕著になり、それに伴う社会や経済の損失や損害が深刻さを増す中、国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)では、世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑える「1.5℃目標」の重要性が確認され、国別目標の強化などが決定されました。「1.5℃目標」の実現には、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることが求められています。企業は環境長期目標の実現に向け、気候戦略を立て、その戦略に基づく環境マネジメントを構築し、着実に取り組みを実行していかなければなりません。
同時に、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の線形経済から、資源を循環させる「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への移行が求められています。また、製品に含まれる化学物質においては、法規制対象となる物質および適用地域が着実に拡大しており、企業は製品のライフサイクル全体で及ぼす環境負荷を低減させていかなければなりません。企業は事業活動を行う上でこれらに適切かつ確実に対応していく必要があります。
また、2022年12月に、国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2030年までに生物多様性の損失を止め、自然を回復の軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の実現をめざすことが合意されました。実現に向けて設定された「ターゲット」には、企業による情報開示や取り組みの強化も含まれており、これらにも対応していく必要があります。

コミットメント

ニコンは、ニコン環境長期ビジョンにおいて「脱炭素社会の実現」「資源循環型社会の構築」「健康で安全な社会の実現」をめざしており、2030年度までの具体的な目標としてニコン環境中期目標を定めています。
脱炭素社会の実現に向けては、2050年度までのカーボンニュートラルの実現に向け、事業所から排出される温室効果ガスを2030年度までに2013年度比で71.4%削減することをめざしています。この目標は、Science Based Targets(SBT)として認定を受けています。また、RE100に加盟し、再生可能エネルギーの導入に取り組んでおり、2022年度は約22%まで導入率を向上しました。さらに、資源循環型社会の実現に向け、今期からは製品における3Rについてリサイクル材の使用率などの定量目標を設定しました。加えて、健康で安全な社会の実現に向けても、新たな生物多様性枠組みに基づく、情報開示充実の要請などに着実に対応していく方針です。
気候変動等は経営に対するリスクである一方で、コア技術を活かし脱炭素化や資源循環に貢献していく事業機会でもあると考えています。ニコンは、中期経営計画でもサステナビリティ戦略を柱に据えており、環境配慮と事業成長を両立しつつ、サステナブルな社会の構築に貢献してまいります。

環境戦略

環境長期ビジョンと環境中期目標

ニコングループでは、環境リスクや規制に積極的に対応していくため、2050年度を見据えた「ニコン環境長期ビジョン」を策定しています。このビジョンでは、世界の状況や、限りある資源を使用して製品を製造・販売しているというニコンの事業の性質から、特に重要と考えられる3つを柱としています。「脱炭素社会の実現」については、2050年度までにカーボンニュートラル達成をめざしています。これらの柱は、マテリアリティ(重点課題)および2030年度をターゲット年とした「ニコン環境中期目標」と連動しています。

ニコン環境長期ビジョン(ターゲット時期:2050年度)

サステナブルな社会/脱炭素社会の実現:カーボンニュートラル達成/健康で安全な社会の実現/資源循環型社会の実現

ニコングループは、「脱炭素社会の実現」「資源循環型社会の実現」「健康で安全な社会の実現」をニコン環境長期ビジョンとして位置付け、サステナブルな社会の構築に貢献していきます。
環境負荷低減につながる新規事業の創出やイノベーションに取り組んでいきます。

環境アクションプラン

ニコングループでは、サステナビリティ方針とニコン環境活動方針に基づき、ニコン環境長期ビジョン、ニコン環境中期目標を策定し、単年目標としては「環境アクションプラン」を定め、グループ全体へと展開しています。これらの目標や計画は、事業活動における環境との関わりを明確にし、環境負荷や環境リスクの大きさを的確に把握することで優先順位を付けています。
また、実績については、自己評価を環境部会にて審議・承認するとともに、抽出した課題をもとに、次年度以降の活動を見直しています。

マテリアリティ

ピックアップ

ISO 14001への適合性などを定期的に確認
「EMSアセスメント*」

ニコングループでは、ISO 14001への適合性やパフォーマンスの向上などを確認するため、各地区のトップおよびEMS事務局の状況を確認する「本部EMSアセスメント」と、地区内各部署の状況を確認する「地区EMSアセスメント」を、それぞれ年1回以上実施して、指摘による組織の改善を進めています。
国内ニコングループでは、アセスメントの質を維持・向上させるため、EMSアセッサー養成研修を年4回実施し、2022年度は合計74名が修了しました。グループ内の「地区EMSアセスメント」は、この研修の修了者によって運用されています。海外グループ会社では、審査機関などの研修に参加することで、アセッサーの養成を行っています。

  • *EMSアセスメント:ニコングループではISO 14001における「内部監査」に相当するものを「EMSアセスメント」、内部監査員を「EMSアセッサー」と呼んでいる。

品質工学の手法に着目し環境負荷低減
「光学ガラス開発・製造プロセスの大幅な効率化」

ニコン製品の世界レベルの光学性能は、高い精度と品質を持つ光学ガラスによって支えられています。光学ガラスの開発・製造工程では、高温の熔解炉を用いたり、実験を多数繰り返したりすることから、多くのエネルギーを使い、廃棄物も大量に生じます。そこで、品質工学の手法に着目し、評価方法の工夫やシミュレーションによる実験回数の削減、リードタイムの短縮化、プレス加工の精度の向上などに取り組んだ結果、エネルギー使用量や温室効果ガス排出量、廃棄物排出量の大幅な削減を実現し、環境負荷の大幅な低減を実現しました。

製品3Rの取り組み
「半導体露光装置のリユース」

ニコングループは、お客様が使用しなくなったニコン製の半導体露光装置を引き取り、国内外の新たなお客様向けに再生・部品交換・調整・据え付けを行うサービスを事業化しています。この事業は、ニコン製品のリユースを自社グループ内で自らが実践している事例で、2022年度までの累積販売台数は449台に達しています。

2022年度の主な活動の実績

Scope1およびScope2における 温室効果ガス排出量(2013年度比)

CO2 33.8%削減

操業に係わる廃棄物総排出量(2018年度比)

20%削減

新規発注分の製品カタログFSC認証紙対応(国内、北米、欧州)

FSC 約93%

関連するハイライト