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2018年9月

「光」の可能性を追求し新たな価値を生み出すことで、これからの100年も社会に貢献し続ける企業を目指します。代表取締役 兼 社長執行役員

Q:2018年3月期の業績と構造改革の進捗状況についてお聞かせください。

2018年3月期は、第2フェーズに入った構造改革を前進させながら、同時にその成果を業績に結実させ、当社が2016年11月以来取り組んできた改革の進捗を示すことができました。映像事業の市場縮小やFPD露光装置の販売台数減少などにより、2017年3月期と比較して売上収益は300億円以上の減収となりましたが、構造改革に関する一時費用の減少および構造改革による固定費削減や事業戦略転換を行った結果、営業利益は500億円以上、当期利益は300億円以上の増益となりました。

ただし、「選択と集中」の結果がコスト削減のみで止まってしまっては縮小均衡となり、攻めの構造改革とは言えません。当社グループが目指すのは、収益力の強化や経営体質の改善を通して、持続的な企業価値を創造することです。その意味で、第2フェーズの経営方針の1つであった「半導体装置事業の黒字化実現」を達成したことには大きな手応えを感じています。人員の最適化などの固定費削減に加え、受注生産を徹底する方針に転換したことで、持続的に利益を生み出す体制を構築することができました。また、もう1つの重点テーマである「映像事業の収益モデル強化」についても布石を打ちました。中高級機に注力する方針のもとで発売したデジタル一眼レフカメラ「D850」が想定以上の売れ行きを示し、フルサイズのセンサーを搭載した機種の販売台数、売上収益は2017年3月期を上回りました。さらに、2019年3月期には、強みである光学技術を活かした当社らしいミラーレスカメラの新製品「Z 7」と「Z 6」を発売します。

FPD装置事業においても、当社グループの優位性をより確実なものとしています。具体的には、4Kテレビ、あるいは今後普及が期待される8Kテレビ向けの液晶パネルや有機ELパネルなど、高精細大型パネルの生産に最適なFPD露光装置「FX-103SH」「FX-103S」を2018年3月期第3四半期から販売しています。第10世代以上のプレートサイズに対応した装置を開発・発売しているのは現在のところ当社のみという強みを活かし、需要を取り込む計画です。

Q:構造改革の完遂に向けて、認識されている課題とその解決についてお聞かせください。

構造改革は順調に進んでいますが、持続的に成長するニコングループとなるには、さらに改革を推し進めなければなりません。構造改革後の成長戦略を見据え、勝てる領域に人材・資本を集中する、いわゆるポートフォリオ経営を推進することが、今後の私の課題です。

例えば、2017年に立ち上げた「技術戦略委員会」では、技術観点からのポートフォリオ経営推進に取り組んでいます。技術戦略委員会は、ニコンのコアコンピタンスである技術を改めて深掘りして確認し、当社が注力すべき新領域の開拓や、既存事業の競争力向上のための中長期技術戦略を策定することを目的としています。その策定プロセスでは、事業ユニットでの事業計画とそれに組み合わせる技術の整理や、事業ユニットと研究開発本部などの本部系ユニットの開発の関係などを改めて整理しています。

これらの整理を進め、社会や市場の動向を踏まえながら注力すべき研究分野をカテゴライズすることで、育成すべき成長の芽に対して思い切った投資をする、といった経営判断が可能になります。ニコングループの将来像を描きつつ、その実現に向けて事業ポートフォリオを構築・更新し、さらに次世代の成長を牽引する新規事業を育てていきます。

Q:共通言語として設定した経営指標の成果についてお聞かせください。

資本市場の視点で経営するための経営指標として、「ROE」*1および「ROIC」*2を設定しました。現在、2020年3月期をスタートとする成長戦略を盛り込んだ新中期経営計画の策定を進めており、この議論の中で、2つの指標がニコングループの部長レベルに浸透し共通言語として活用されていることを実感しています。

ただし、従業員全員への浸透にはまだ時間がかかります。ニコングループが真に変わるためには、「良いモノをつくりたい」という想いを引き続き大切にしつつも、資本効率を重視することが必須です。ROEやROICについて、全世界で働く従業員全員が納得できるようなメッセージを発信し、できる限り早く浸透するようにしなければならないと考えています。

目指す組織の在り方は、成長を実現するために何が必要なのか、一人ひとりの従業員が考えられるような組織です。こういう組織の土台をつくることが、2019年3月期に私が自らに課している課題の1つです。

Q:これからの社会で、新たな価値を創出するためのポイントについてお聞かせください。

AI(人工知能)を利用したさまざまなシステムが暮らしや産業の中で急速に普及し始めるなど、今、社会は大きな変革期を迎えています。この大きな変化の中で、ニコングループは、これまで培ってきた光学技術の追求、つまり「光」の可能性を追求し、産業や人々が必要とする「眼」の役割を担っていきたいと考えています。

人間は、脳へインプットされる情報の8割以上が、眼から得る視覚情報だと言われています。同様に、AIへの情報インプットも、眼の機能が大きな役割を担います。眼の役割を担う「レンズ」と「センサー」の活用が、AI応用のカギを握ると考えており、当社は「レンズ」と「センサー」の技術で貢献できると考えています。実際に、当社では、子会社であるOptos Plcの超広角走査型レーザー検眼鏡で撮影した画像をAIで解析し、医師による病気の診断を補助するソリューションの共同開発をすでに進めています。

こうしたビジネスを拡大させることで、これまで完成品を製造・販売してきた当社のビジネスモデルは大きく変わっていきます。AIをはじめとする技術との融合を前提に、アプリケーションを含むソリューションを開発・提供する事業、さらには、事業パートナーに対して特定の技術をモジュールとして販売する事業といった、これまでとはまったく違うビジネスモデルを展開できると考えます。光学技術をはじめ、差別化が可能な当社独自の技術に資源を集中して新しい価値を生み出すことで、大きな成長を目指していきます。

Q:ガバナンスを強化するために、社外取締役が担う役割についてお聞かせください。

当社グループの従来の事業領域以外にもアンテナを張り、ビジネス機会を積極的に見出すことにより、事業パートナーとの連携や技術の融合の可能性が広がります。そのためには、社外取締役の声をこれまで以上に経営に反映させることも重要と考えています。現在策定中の成長戦略は、私たちがもともと得意としてきた分野以外の技術やビジネスの仕組み、考え方を取り入れることを前提として検討しています。未知の領域を包含する成長戦略の検討やその成功の蓋然性の検証にあたっては、社外取締役4名それぞれの経験に基づく知見や洞察を当社の取締役会においてぶつけてもらい、議論を深めていきます。

2018年3月期は、第三者機関による取締役会の実効性評価を実施し、ガバナンスの強化について一定の評価を得た一方で、改善の余地がまだあるという指摘も受けました。形式的な要件を整備するだけでなく、実質的にもより透明性や規律の確保がなされるコーポレート・ガバナンス体制の構築を目指します。

Q:社会の持続可能(サステナブル)な発展に向けて、ニコングループが貢献する領域についてお聞かせください。

昨今、ESG(環境・社会・ガバナンス)に対する企業の姿勢を問う声が高まっています。ガバナンスについては、成長戦略の策定過程において多様な視点を反映するために、あるいは透明性と規律の向上という観点からも、継続的に強化に努めるのは前述の通りです。一方、事業を通じた環境・社会への貢献に関しては、当社グループが「産業と人々の新しい眼」としての機能を提供し成長を実現することは、企業としてのサステナビリティだけでなく、社会、そして人類のサステナビリティにも通じるものだと言えます。例えば、病気の診断補助を可能とする「眼」は、人々の健康維持やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上、さらには社会保障費の低減にも貢献します。

現在策定中の成長戦略は、当社の事業と社会とのつながりについてもグループ内外にさらに分かりやすく伝えるものとしたいと考えています。これからの100年も、世界の人々のために存在価値のある企業として「信頼と創造」を具現化し、事業活動を通じて社会の持続可能(サステナブル)な発展に貢献していきます。

Q:構造改革後の成長戦略についてお聞かせください。

現在策定中の成長戦略は、「光」の可能性を追求しながら新たな価値の創出を目指すものとなります。従来の製品や事業領域の枠組みを超えるチャレンジには、新しい発想を生み出すための「好奇心」、誠実な心でさまざまな価値観を受け入れ多様性を尊重する「親和力」、そして、自らの考えを伝え共有することで大きな流れを創り出す「伝える力」という「心掛け」が不可欠です。私自身が、これまで視野に収めていなかったビジネスや技術について関心を持って学ぶだけでなく、ニコングループ全従業員の挑戦する心を呼び起こす組織マネジメントを行います。

人類の歴史600万年の中に起こった大変革を概観すると、農耕社会の成立が約1万年前、産業革命が約200年前、そしてインターネット革命が約20年前。大変革の周期は次第に短くなっており、今後も大きな変化が起こり続けることが予想されます。こうした変化の最中にあって、学ぶ意欲がない組織は淘汰されることが明白です。私たちは、来るべき社会の大変革の中でニコングループが果たすべき役割と提供すべき価値を構想し、成長を続けます。

ステークホルダーの皆様からの、当社グループの構造改革の完遂と企業価値創出へのご期待にお応えできるよう、全力を尽くします。

引き続きご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。