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2019年8月

持続的・中長期的な企業価値向上を実現する、「精密・光学のリーディングカンパニー」を目指します。 代表取締役 兼 社長執行役員 馬立 稔和

Q1:社長ご就任の抱負をお聞かせください。

2019年6月27日より、代表取締役 兼 社長執行役員に就任しました馬立稔和です。これまでの構造改革フェーズから成長戦略へと舵を切る節目の年に、このような重責を担うこととなり身の引き締まる思いです。

私は入社以来、一貫して、半導体露光装置の分野で仕事をしてきました。私が入社した1980年は、国産初の商用ステッパー「NSR-1010G」を発売した年で、まさに、ニコンの新たな時代の幕開けでした。当時はまだ新規事業という位置付けで、少人数で開発に取り組んでいたこともあり、入社1年目からかなり責任のある仕事を任せてもらえる環境でした。さまざまな経験はもちろん、その中で培った度胸や最後までやり抜く責任感など、現在に活かせるものを早い時期から得ることができたのは、振り返ればとても恵まれていたと思います。

私の一番の使命は、ニコングループのさらなる成長の礎を築くことだと認識しています。そのためにまずは、目指すべき企業像を明確にし、全従業員がそこに向かって突き進む、「明るく元気な会社」にしたいと思っています。現状や結果に一喜一憂するのではなく、しっかりとした状況分析と見通しを踏まえた上で、全社一丸でニコングループのさらなる成長に向かう組織づくりをしていきます。

構造改革は、我々にとって忘れることのできない、大きな痛みを伴う経験になりました。一方で、長い間の課題を全員で協力して解決できたという経験が得られたことも事実です。そういった企業風土があることも我々の強みであり、これから成長戦略を展開していくにあたり、大きな自信となっています。

成長戦略を進める上で私が大事にしていきたいことの一つは「お客様に寄り添う姿勢」です。当社グループは光利用技術、精密技術といった長年磨き蓄積してきた優れたコア技術を有しており、世界中から高い評価を受けています。しかし、世の中の動きは速く、技術革新は日ごとに加速し、ユーザーニーズも多様化しています。お客様の近くで、環境、状況の変化により早く、機敏に対応することが、さらなる成長の実現において重要です。

Q2:構造改革の背景と成果についてお聞かせください。

当社は、2016年11月、進行中であった「中期経営計画2015年度版」を取り止め、構造改革フェーズに移行しました。主力事業の想定以上の市場縮小や成長事業が期待通りに進捗しない状況から、財務基盤が健全なうちに全社を挙げて「攻めの構造改革」を断行する必要があると考えたためです。2019年3月期までを構造改革フェーズと位置付け、企業価値向上の観点から経営体質そのものにまで踏み込んで改革を行い、収益力を抜本的に強化することを目指しました。

慢性的な赤字を余儀なくされていた半導体装置事業では、受注生産の徹底や開発方針の変更等、事業戦略を根本的に見直しました。映像事業では、収益性重視の観点から高付加価値製品への選択と集中を進めるとともに、開発・生産・販売体制を最適化しました。これらのほかに、人員の適正化による固定費の抑制や、資本市場とリンクした経営管理指標の導入、ポートフォリオ経営の基盤構築等も行いました。その結果、当初の目的である収益性と経営体質の改善を着実に進めることができました。しかし、当社を取り巻く事業環境の不透明感はこれまで以上に増していると認識しています。引き続き緊張感を維持しながら、今後も継続的に改革・改善を進めていくことが不可欠です。

構造改革を支えてくださったステークホルダーの皆様のためにも、経験した痛み、苦しみを忘れることなく、緩みないオペレーションを継続し、ニコングループのさらなる成長を実現したいと強く心に思っています。

Q3:「精密・光学のリーディングカンパニー」のポイントについてお聞かせください。

構造改革により、収益性と経営体質の改善を実現しましたが、前述の通り、市場環境は厳しい状況が続いています。このような状況のもと、2019年5月、当社は新中期経営計画を発表し、企業理念である「信頼と創造」、そして、経営ビジョン「Unlock the future with the power of light」という志のもと、中長期的な視点で「精密・光学のリーディングカンパニー」を目指すことを掲げました。精密・光学分野で規模とリーダーシップポジションを有する事業に資源を集中することで、持続的・中長期的な企業価値向上を実現していきます。

なお、新中期経営計画では、2020年3月期から3年間を、その後の持続的な企業価値向上を実現するための「成長基盤構築」の期間と位置付けました。持続的な成長に向けての基盤構築を最優先し、長期的な「稼ぐ力」を着実に高めていく考えです。

Q4:「精密・光学のリーディングカンパニー」の実現に向けた重要戦略についてお聞かせください。

「精密・光学のリーディングカンパニー」の実現に向けた最も重要な戦略の一つが「新たな収益の柱の創出」、つまり、新たな成長エンジンを早期に獲得することです。長期的な成長領域として、デジタルマニュファクチャリング、ビジョンシステム/ロボット、ヘルスケアの3つの領域を見据えながら、新中期経営計画期間においては、とりわけデジタルマニュファクチャリング領域のうち、3Dプリンターやレーザー加工機などを主とする「材料加工事業」の立ち上げに注力します。材料加工の市場は、生産自動化やマスカスタマイゼーションなどの社会ニーズの高まりで、規模の拡大が見込まれています。また、多くのものづくり企業は、製造時の段取りや工程設計、試作品製作等にかかる負担を軽減し、製造技術の制約を乗り越え、より早く、シンプルで、自由なものづくりの実現を求めています。我々には精機事業、産業機器事業等で培った、高精度制御技術や非接触3D計測技術、さらに光利用技術などがあります。これらの技術やノウハウを活用し、「光を使った工作機械」を提供することで、ものづくり分野における新たな市場・産業を創造できると確信しています。具体的には、従来の刃物やドリルでの金属加工から、レーザー(光)を使った加工機に進化させることで、短期間、低コストで高精度な材料加工を実現できます。また、造形・肉盛りといった金属3Dプリンターの要素にマーキング、接合、研磨を可能とするレーザー(光)の技術を組み合わせることで、任意の形状のほぼすべてを実現することが可能になると考えています。2019年4月に受注を開始した光加工機「Lasermeister 100A」は、ニコンが独自技術を用いて最初に市場投入した金属加工機であり、新市場創出の入り口を見つけるための製品です。小型で、企業や学校の研究施設、一般的なオフィスなどにも設置できます。近年では、ファブリケーションラボラトリーという新しい形態が世界中に広がっており、デジタルファブリケーション機器が設置された施設にデータを持ち込み、誰でも自由にものをつくることが可能になっています。このような身近な施設に投入して、簡単で自由なものづくりを提供したいと考えています。

我々は、これまで社内で長い時間をかけて製品を開発するというスタイルを主に取ってきました。しかし材料加工事業では、まずは市場参入のためのエントリーモデルを提供し、その製品を通じてお客様と対話し、どういうことをしていけばいいか、その方向性について、お客様のニーズに合わせていく手法で製品を進化させていきたいと考えています。その際、オープンイノベーションや工作機械メーカーとの協業も視野に入れ、必要に応じて外部の知見や技術を柔軟に取り込みながら進めていきます。こうした取り組みにより、材料加工事業を、グローバル市場のリーダーシップポジションの一角を担う存在へと進化させていきます。

Q5:既存事業の収益力強化に向けた方針についてお聞かせください。

既存事業の収益力強化を進めることも、重要な戦略の一つです。特に映像事業、精機事業およびヘルスケア事業における既存分野については、中長期的に安定したキャッシュ・フローを創出する役割を担います。変動の大きい市場においても、安定した収益が得られる力をつけていくことが必要です。構造改革により固定費の削減や適正化は大きく進捗したと思いますが、業務プロセスをよりシンプルに定義することで、さらなる改善の余地があると見ています。また、全社的なコスト改革の一環として、サプライチェーンや販売、生産体制の最適化、工程の見直し等をさらに進め、各事業の製品競争力を高めていきます。

それぞれの事業についてお話ししますと、まず、映像事業については、「Z シリーズ」をはじめとする中高級機種の強化を図り収益力を高めます。また、SNSや映像アプリとの連携を高め、撮影した映像の楽しみ方を積極的に提案していきたいと考えています。精機事業については、FPD露光装置、半導体露光 装置とも中長期的には安定ないし成長が見込まれますが、その一方で競争は厳しく変化も激しい市場です。このため、収益性を重視した選択と集中を図りつつ、お客様の声に耳を傾け、ニーズを確実に捉え、装置とサービスの両面で最適なソリューションを提供していきます。ヘルスケア事業については、生物顕微鏡や超広角走査型レーザー検眼鏡の既存分野においてしっかりと市場を見極め、機会を逃さずに製品投入していく一方で、コストの低減にも努め、収益力を強化してキャッシュを創出できる体制をさらに強化していきます。

Q6:「ものづくり基盤の強化」に向けたポイントについてお聞かせください。

成長領域、既存事業を支える新中期経営計画の戦略施策の一つとして掲げている「ものづくり基盤の強化」においては、デジタルマニュファクチャリングの進展という環境変化を見据え、製造における基本的な部分から進化させていくことを目指します。IoT、AIを軸にし、あらゆる工程の処理速度・効率性が高まることで、製造業の競争優位の源泉は急激に変化していくと考えられます。それらの潮流を捉え、お客様のニーズを満たす製品を適切なQCD(品質・コスト・納期)で提供するためにも、我々のものづくり分野においてさまざまな改革に取り組む必要があります。

ニコングループは、事業横断的な技術戦略の構築を目指し、2017年に「技術戦略委員会」を立ち上げ、委員長の私は実質的なCTOとして、全社の設計、開発、生産部門をすべて見て回りました。そして、ニコングループには確かな技術力や品質へのこだわりなど、他社には真似できない独自の強みが多数存在していることを再確認しました。その一方で、技術間のつながりが乏しく全体のまとまり感がないという課題や、これからの製品開発を考えると足りない部分が散見されました。自社の状況を冷静に分析し、不足部分を早急にリカバリーすると同時に、強みをさらに伸ばすための投資を強力に実行していきます。

また、お客様から高い評価をいただいている製品の信頼性についても、一層の品質向上に向けた取り組みを強化していきます。これまで事業部単位での取り組みが多かったのですが、構造改革の中で、事業横断的に展開できるような仕組みを構築し、品質マネジメントの全体的な底上げや改善を進めてきました。この動きは、これからも引き続き強化していきます。

Q7:ガバナンス改革に向けたさまざまな施策についてお聞かせください。

構造改革中に、社外取締役の構成比率増加や、第三者機関による取締役会の実効性評価の導入など、ガバナンス改革に向けたさまざまな施策を実施してきました。今後は、取締役会のさらなる活性化や後継者計画の策定に取り組むことで、ガバナンスの一層の強化を目指していきます。取締役会の活性化という点では、社外取締役の多様性拡大を重点施策に設定しており、この度、新たに製造業等で要職を歴任された方に加わっていただきました。ニコングループにとって有益な深い知見や洞察を十二分に発揮していただけると期待しています。また、後継者計画については、取り組みの一環として、指名審議委員会を2019年5月に設置しました。

Q8:SDGsをはじめとしたニコングループのサステナビリティ戦略についてお聞かせください。

近年、SDGsをはじめとする社会課題に対する企業の取り組みへの注目度が高まっています。企業は社会の一員であり、社会が持続し発展しなければ企業の存続や成長もあり得ません。したがって、私はSDGsをはじめとしたサステナビリティへの取り組みは、企業経営と一体であり、事業を通じて社会に貢献することは当然であると考えています。我々が果たすべき役割や目標を定めてしっかりと取り組んでいくことが、社会とニコングループ双方の持続的成長につながるものと信じています。我々の事業はそうした「社会への貢献」という点で、これまで大きな役割を果たしてきました。そして、これからもそうした役割を果たす機会が大いにあると捉えています。

例えば、当社グループの主力製品の一つであるカメラやその交換レンズは、世界各地で起きている出来事の真実を伝えたり、スポーツの感動を共有したりする手段として欠かせない役割を果たしています。また、FPD露光装置や半導体露光装置は、メモリ、MPU、画像センサーなどの多様な半導体やディスプレイといった現代のデジタル社会を支える重要なデバイスの製造プロセスの要を担ってきました。

こうした既存事業の競争力を支えているのは、光利用技術と精密技術に代表される当社のコア技術です。今後もこれらの事業を一層強化しつつ、こうしたコア技術をさまざまな分野に適用することで、社会課題を解決・改善する新たな事業を構築することができると確信しています。

新中期経営計画では、デジタルマニュファクチャリング、ビジョンシステム/ロボット、ヘルスケアの3つを長期成長領域として定めました。その中でも特にロボットの領域は社会に大きく貢献する可能性があると考えています。ロボットにおいて、「眼」と「手」は今後の重要な開発テーマです。ロボットが視覚や多機能で正確に動く手を持つことで、大きな進化や発展が望め、それは社会全体に与える影響も大きいと考えています。そして、そうした優れたロボットを実現することは、当社が取り組んできた光利用技術、精密技術をはじめ加工技術や制御技術、そしてソフトウエア開発技術などの集大成になると思います。

SDGsには「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」という目標があります。この目標達成に向かい、当社が培ったコア技術やアセットを活用しイノベーションに挑戦し続けること、それによってSDGsに代表される社会課題にインパクトをもたらし、事業の成長と社会への貢献を継続していくことが我々の「価値創造プロセス(サステナビリティ戦略)」です。

ニコングループは、この価値創造プロセスのサイクルを回し続けることで、持続的な企業価値と社会価値の向上を実現していきます。

Q9:ニコンブランドに関するお考えについてお聞かせください。

私は、ニコンブランドとは企業理念である「信頼と創造」を形にしたものであると認識しています。一例ですが、極寒の地でもニコンのカメラだけは壊れずに撮影ができたという実際の出来事からお客様や社会の信頼を獲得しつつ、長年、お客様のニーズに応える新たな機能や性能の向上を実現してきました。お客様の期待に応えながら、その信頼を保ち、あるいはさらに高めながら、新しいものを創造し提供してきた歴史こそがニコンのブランドであり、「信頼と創造」の原点であると思います。今後も、「信頼と創造」を実感していただける製品、サービスを提供することで、ニコンブランドをさらに高めていきたいと考えています。

Q10:ニコングループの中長期的な展望についてお聞かせください。

約2年半にわたる構造改革を終え、持続的な企業価値向上の実現に向けた成長基盤構築に着手しました。新たな事業の立ち上げに向けた体制づくりも進めています。開発の起点はあくまでもお客様視点。その上で、会社が進むべき未来を定義し、ニコングループを導くことが、私の使命であると考えています。全従業員一丸となって、収益力の強化にこれまで以上に注力していくとともに、イノベーションにより、世の中に新たな価値を提供することで、ニコングループの持続的な成長は必ず実現できると確信しています。

ステークホルダーの皆様からのご期待にお応えできるよう、全力を尽くします。引き続きご支援いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。