CEOメッセージ

掲載内容は2023年8月現在の情報です。

お客様の欲しいモノやコトを、お客様にとって最適な方法で実現します。代表取締役 兼 社長執行役員 馬立稔和

中期経営計画初年度となった2022年度は、新型コロナウイルス感染症による影響が緩和される一方で、地政学リスクに伴う資源価格高や、インフレ抑制のための各国における政策金利上昇、そして歴史的な円安といった外部環境の影響を大きく受ける年となりました。そのような環境下ではありましたが、当社の業績は増収増益となりました。これは、ステークホルダーの皆様の御協力、ご支援によるものと心より感謝しています。

中期経営計画の進捗

2022年4月に発表した中期経営計画(2022~2025年度)では、まず2030年のありたい姿を「人と機械が共創する社会の中心企業」と定義し、その実現に向けて2025年に到達するべき目標を定め、戦略と施策を策定しました。中期経営計画最終年度である2025年のありたい姿として、「お客様の欲しいモノやコトをお客様にとって最適な方法で実現」を掲げ、完成品・サービス・コンポーネント一体の「ソリューション提供」強化を全社方針としています。この方針に基づき、「主要事業」と位置付ける映像・精機事業の安定化と、ヘルスケア・コンポーネント・デジタルマニュファクチャリング事業から成る「戦略事業」の収益拡大を進めています。

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中期経営計画初年度は、売上収益・営業利益ともに想定を上回って推移

中期経営計画初年度を総括しますと、全社方針である、完成品・サービス・コンポーネント一体の「ソリューション提供」強化に向け、着実に前進した1年でした。
主要事業含め全事業において、お客様との対話の機会をできる限り増やし、ニーズを的確に把握した製品・サービスの提供を心掛けるなか、特に、戦略事業であるヘルスケア事業、コンポーネント事業では、有望市場での新たな価値創造を目指したソリューションの提供や受託事業の拡大に取り組みました。デジタルマニュファクチャリング事業においては、ビジネス基盤の強化を目的に、SLM Solutions Group AG(現 Nikon SLM Solutions AG、以下「SLM社」)を連結子会社化するなど、積極的なM&Aやアライアンスを実行しました。
結果として、2022年度の売上収益は、精機事業が想定以上の市況の低迷などにより減収となりましたが、その他すべての事業は増収となりました。営業利益については、為替影響の追い風もありましたが、ミラーレスカメラの販売が好調だった映像事業、ライフサイエンス(生物顕微鏡)やアイケア(網膜画像診断機器)の拡販が進んだヘルスケア事業が中期経営計画策定時の想定を大きく上回りました。またコンポーネント事業も光学・EUV関連コンポーネントを中心に順調に成長し、営業利益に占める戦略事業の割合が初めて3割を超えました。今後はヘルスケア事業・コンポーネント事業に続くデジタルマニュファクチャリング事業の成長を実現し、中期経営計画最終年度となる2025年度の目標である、全社売上収益7,000億円、営業利益率10%以上の達成を目指すとともに、レジリエントなポートフォリオ経営を推進していきます。

主要事業:映像事業は収益計画の安定達成に目処、精機事業は組織変革に着手

映像事業

中期経営計画におけるありたい姿は、「映像表現の可能性を広げ、世代を超えた世界中のファンから圧倒的な支持を獲得」です。映像事業は、構造改革と中高級機を中心としたミラーレスカメラへのシフトで収益性が向上、レンズ交換式カメラ・交換レンズともに平均販売単価が上昇、さらに為替影響もあり、大幅な増収増益となり過去最高の営業利益率を達成しました。コンテンツ事業も順調にスタートしています。また、ミラーレスカメラ初のフラッグシップモデル Z 9は、発売後1年間の販売台数としては過去15年のフラッグシップ機で最高であり、かつ、発売後も機能向上のファームウェアのアップデートを続け、進化を継続しています。

精機事業

ありたい姿は、「未来を切り拓くソリューションを顧客に提供し、デジタル社会を支える」です。精機事業は5つのセグメントで唯一、減収減益となりました。これは、半導体露光装置はArF露光装置を中心に販売台数が増加し増収となった一方で、FPD露光装置がパネル価格下落に伴い顧客の設備投資が縮小し減収となったためです。このような状況のなか、2023年4月にFPD装置事業部と半導体装置事業部を統合し、精機事業本部としました。両事業部のリソースを柔軟に運用することで、今後の市場変化により機動的に対処できる体制を整えるとともに、デジタル露光など、将来に向けた取り組みを強化していきます。

戦略事業:順調に推移、デジタルマニュファクチャリング事業は事業基盤拡大へ

ヘルスケア事業

ありたい姿は、「イノベーションを通じて、人々のクオリティオブライフの向上を支援」です。ヘルスケア事業は民間中心に顧客が大きく広がり、2021年度初の黒字化から一気に営業利益100億円以上へ飛躍を遂げました。中期経営計画最終年度の目標は売上収益900億円、営業利益100億円であり、為替効果もありましたが、これを3年前倒しで達成したことになります。長年培った顕微技術による解析、評価をベースに、細胞受託生産など新たな価値提供を含め、更なる成長を目指します。

コンポーネント事業

ありたい姿は、「顧客のイノベーションを支えながら、顧客とともに成長」です。コンポーネント事業は、半導体関連分野の幅広いお客様の高度なニーズを支え、ビジネスを拡大しました。EUV関連コンポーネント、光学部品・光学コンポーネント、ロボット向けエンコーダなどが好調に推移し、増収増益となりました。今後とも、EUV関連ビジネスのように、光利用技術・精密技術のコアコンピタンスを活かして、様々な機会を捉えていきます。

デジタルマニュファクチャリング事業

ありたい姿は、「光応用技術で、ものづくりの世界に革新をもたらす」です。中期経営計画初年度は、材料加工ビジネスの本格的な事業拡大を進めるために、ニコンとしては過去最大の規模でSLM社の買収を実施し、2023年4月にはアドバンストマニュファクチャリング事業部を新設しました。この事業部は中心拠点を米国とし、日米欧で事業展開を行う基盤の整備を行っています。また、産業機器事業部で販売しているレーザーレーダやX線/CT検査装置についても、お客様の生産ラインへの導入が進んでいます。新設事業部の進展にも注視しつつ、デジタルマニュファクチャリング事業を中核ビジネスへ育成していきます。

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中期経営計画実行に不可欠な経営基盤強化

サステナビリティ戦略

ニコンのサステナビリティは、企業理念である「信頼と創造」に基づいています。事業が社会・環境から受ける恩恵とそれらに与える影響を常に評価・改善し続け、社会の期待に「信頼」で応えること、事業を通して社会・環境課題の解決やSDGsの達成に貢献する価値を「創造」することが柱です。
2022年度には、ニコンのサステナビリティが「信頼と創造」と2030年のありたい姿に沿うよう、12のマテリアリティ(重点課題)を点検し、2つのマテリアリティを変更しました。具体的には、「サプライチェーン管理の強化」は、事業環境の変化に対応して、よりフレキシブルかつ俊敏に対応できる体制を目指し、「レジリエントなサプライチェーンの構築」に変更しました。また、「ダイバーシティ&インクルージョン」はより一層、皆が活躍・挑戦する企業文化を醸成するため公平性の視点を追加し、「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」(DEI)と変更しました。この点検にあたっては、ステークホルダーの意見や期待を重視し、従業員の意見を幅広く集めるとともに、経営層が外部有識者と議論した際に得た客観的な意見も反映しています。ニコンは、今後もサステナビリティ経営に取り組み、持続可能な社会に貢献する企業として成長していきます。

人的資本経営

人的資本経営は重要な戦略であり、会社のありたい姿を実現するためには、人材は最も重要な経営資源です。ニコンでは、「人材獲得」、「人材育成」、「人材活躍」の3つを柱とし、経営戦略と人材戦略を一体で進めています。私は、従業員一人ひとりが主体的に考え行動することが人材の成長に不可欠だと考えています。会社は、そのための環境を整えていきます。現在、経営層が人材の獲得や活躍支援、ソリューションエンジニアの育成などについて議論を重ね、施策を実施しています。ニコンは、一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を整えるとともに、従業員の自覚を促すことにより、自律的に人材が育つ企業となることをめざします。

ものづくり・ガバナンス

ものづくりについては、事業環境が大きく変化し、各事業における需要変動が高まるなか、臨機応変な対応や効率的な生産に向けた取り組みを進めています。具体的には、子会社である栃木ニコンや、当社の水戸製作所をはじめとする国内生産拠点において、光学部品・光学コンポーネントや複数事業のレンズに関する生産能力や生産性の向上に向けた大規模投資の検討に着手しています。また、コーポレートガバナンスにも積極的に取り組んでいます。社外取締役の多様性をさらに向上させ監督の実効性を強化するとともに、独立社外取締役会議を設置し、客観的かつ充実した議論を実施しています。また、役員報酬制度を改定し、中期経営計画達成・企業価値向上に向けたインセンティブを高めています。その他、顧客・従業員重視のデジタルトランスフォーメーション(DX)や、ニコンの強みである技術力についても、着実に強化を進めています。

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ありたい姿の実現:「信頼と創造」の基に

ニコンは、1917年の創立以来、光の可能性に挑み、お客様の信頼と期待に応えながら、新たな価値を創造してきました。この歴史こそがニコンブランドの源泉であり、企業理念「信頼と創造」の原点です。もちろん、ブランドは過去の蓄積だけでなく、時代や社会の期待に合わせて磨き上げ、価値を高めていく必要があります。私たちは、お客様の欲しいモノやコトをお客様にとって最適な方法で実現するため、お客様が真に求めるものは何かを常に考え、完成品・サービス・コンポーネント一体でのソリューション提供をしていきます。そして、「人と機械が共創する社会の中心企業」を目指し、事業の成長と企業価値の向上を通じて進化し続けます。今後とも、ニコンにご期待ください。