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2021年9月

未来に挑戦する、新たなニコンをつくります 代表取締役 兼 社長執行役員 馬立 稔和

豊かな未来の実現のために

当社は、「信頼と創造」という企業理念のもと、100年以上にわたる歴史の中で培った「光利用技術」と「精密技術」をベースに多様な製品やサービスを提供し、社会や文化の発展に貢献し続けています。

昨今、技術革新のスピードの加速やお客様ニーズの多様化、社会課題の顕在化などにより、環境は急速に変化しています。また、新型コロナウイルス感染症拡大により、事業活動は大きな影響を受けました。そうした環境下で当社は、10年、20年先の豊かな未来を目指し、社会やお客様の課題を解決するため、守りに入ることなく、アセットを最大限活用してビジネスを再定義する必要があります。2019年5月に発表した現行の中期経営計画では、2022年3月期までの3年間を「成長基盤構築」の期間と位置付け、強固な足場づくりのためのさまざまな施策に取り組んでいます。

成長基盤構築は着実に進展

中期経営計画2年目を振り返ると、目標に掲げた中長期の成長基盤構築は、着実に進展しているといえます。中でも2022年3月期に新設したセグメントの「コンポーネント事業」は、光学コンポーネントやEUV関連コンポーネントの取り組みが実を結び、収益獲得フェーズへの移行を実現したと考えています。
長期成長領域で注力する「デジタルマニュファクチャリング」領域における材料加工事業でも、オープンイノベーションやお客様の開拓が進捗し、宇宙航空産業向け受託加工ビジネスへの参入、材料加工受託サービスの提供など、具体的な進展がありました。グローバルな事業展開を目指し、さらなる成長を加速していきます。

「ビジョンシステム/ロボット」領域は、センサーやロボット、スマートカメラなど当社の強みや技術を活用したソリューション開発を進めています。「ヘルスケア」領域では、生物顕微鏡や網膜画像診断機器などの販売で収益を拡大するとともに、創薬支援サービスや細胞受託生産などを通し、成長を実現していきます。

財務目標の「ROE8%以上の達成」については、映像、精機の既存2事業の業績が想定以上に厳しく、最終年度での達成は厳しい見通しです。新型コロナウイルス感染症の影響が大きかったとはいえ、そうした外部要因を吸収しきれなかったことは、経営者として大きな反省点です。各セグメントの収益性の向上や資本効率の改善をよりスピードアップさせ、早期達成を目指します。

2019年の社長就任以降、事業環境は目まぐるしく変化しています。しかし、持続的成長への回帰に向け、「事業収益力強化」と「成長エンジン獲得」を目指す方針は不変です。新たな収益の柱を創出しながら長期的な「稼ぐ力」を高め、持続的な企業価値向上を実現していきます。

映像事業は構造改革を着実に実行。BtoB展開を含め事業領域を拡大

映像事業は、2019年11月に発表した構造改革により、事業構造の抜本的な変革に取り組んでいます。2021年3月期は2020年3月期に続き赤字になったものの、事業運営費の削減は当初計画を前倒しで達成しています。将来リスクを徹底的に精査し、2021年3月期までに固定資産・棚卸資産の約300億円を損失処理したほか、2,000人以上の事業要員適正化や生産集約、販売会社再編などの施策を推進しています。

2022年3月期は、プロ・趣味層向け中高級機種市場へのフォーカスを継続し、フラッグシップモデルのフルサイズミラーレスカメラ「Z 9」の市場投入や、Zマウントレンズのラインアップを30本近くまで拡充します。若年層のお客様拡大に向け、動画機能などを強化しながら価格を抑えた「エントランス機種」の発売や、映像表現の創作を支援するソフトウエアの提供も行います。

当社はこれまでカメラやレンズというハードウエアの販売に注力してきましたが、お客様が本来求めているのは、その先にある感動や楽しさ、あるいは課題を解決させることであると私は考えます。映像関連技術を活用したBtoB展開にも積極的に取り組むなど、視野を広げ、これまでのビジネススタイルにとらわれることなく事業領域の拡大を図っていきます。今後も施策を着実に実行し、2022年3月は黒字化を果たします。

精機事業は収益源を多様化し、事業価値の最大化を追求

2021年3月期の精機事業は、新型コロナウイルス感染症による渡航制限リスクの回避が最大の課題となりました。これには、装置据付業務の現地化や遠隔トレーニングを推進し、海外オペレーション強化に取り組んでいます。半導体露光装置では主要なお客様との取引をベースとしながら、国内外で安定的なお客様の開拓を進めるなど、リスクと機会を冷静に見極めながら、事業環境の変化に即応できる舵取りを行っています。

中古の半導体露光装置の修理調整や再利用である、リファーブ・リユースを含めたサービスビジネスの拡大、当社の強みである精密制御や高精度計測技術を活用した周辺ビジネスの開拓といった多角的な事業ポートフォリオの構築にも注力しています。高速、高精度にウェハを計測、補正するシステムで、お客様製品の歩留まり向上に貢献するアライメントステーション「Litho Booster」は、計測・検査分野における市場の展開、拡大が着実に進んでいます。

映像事業と並び、精機事業はニコングループ全体の利益成長をけん引する主要な既存事業です。今後も収益性重視の事業運営を徹底しながら、お客様に寄り添い、ニーズに的確に応える技術・製品開発を推し進め、事業価値の最大化を追求していきます。

材料加工事業でものづくりに革命を起こす

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が進む中、ニコンのコアバリューを最大限に活かせるものが、「デジタルマニュファクチャリング」領域における材料加工事業です。従来、機械部品の製造は、刃物を使って金属塊を削り出すか、鋳型からつくる方法が一般的でした。ニコンの高度な光利用技術と精密制御技術を活用した光加工機「Lasermeister」シリーズは、レーザー光を使った全く新しい金属加工機です。既存の技術では困難であった複雑な形状の金属加工を、手軽かつ比較的安価に実現できます。リリース以来、機能や性能の向上を重ねながらラインアップを広げています。

2021年4月には、米国の宇宙航空機部品受託加工会社Morf3D Inc.を子会社化し、中小型衛星向けの受託加工事業に参入しました。5月には、計算流体力学を用いたシミュレーション技術を持つオーストリアのbionic surface technologies GmbHと、リブレット加工技術における戦略的共同開発契約の締結を発表。微細で周期的な溝を施す加工により、流体の抵抗を低減させ、エネルギー効率を改善させます。
また、新たに開発した光加工機を用い、子会社である株式会社仙台ニコンで、リブレット加工の受託サービスの提供を行います。

生産の自動化、多品種少量生産を効率的に行うマスカスタマイゼーションのニーズの高まりにより、材料加工市場は今後も拡大すると予想されます。蓄積した技術をベースに、必要に応じてM&Aやアライアンスを行い、「ものづくりに革命を起こす」という気概をもって進めていきます。そして、プロダクトアウトの発想ではなく、お客様にとって価値あるものを提供するという視点で事業に取り組みます。社会やお客様の課題を解決することによって、対価につなげていきます。

社会課題を的確に捉え、持続可能な社会の実現を目指す

私は、経営の重点軸を「イノベーション(革新)」「プロフィタビリティ(収益性)」「サステナビリティ(持続可能性)」の3点に置いています。中でもサステナビリティはイノベーションを生み出す源泉であり、企業の社会的存在意義を形づくるうえで重要な要素です。例えば、リブレット加工をタービンブレードや航空機の表面に施せば、流体抵抗を低減させることができ、燃費改善やCO2削減などの効果が期待できます。ほかにも、「ビジョンシステム/ロボット」領域の進展による労働環境改善への貢献、「ヘルスケア」領域での創薬や病理診断支援など、社会課題を的確に捉え、事業の成長に活かしていきます。喫緊の世界共通課題である気候変動に対しては、サプライチェーンの温室効果ガス削減や、事業を通じてカーボンニュートラルな社会の実現に寄与することで、サステナブルな社会の発展に貢献していきます。

ガバナンスにおいては、取締役会の実効性向上への取り組みを継続します。内部統制強化の一環として2021年4月に組織改編を行い、本社のハブ機能を担って海外拠点の内部統制を促進する部門を設けるなど、グループの管理・統制およびリスクマネジメントの強化を図っています。

同じく2021年4月、サステナビリティを重視する経営方針や戦略のグループ展開を促進するため、サステナビリティ戦略部を社長直轄組織として改組しました。企業の社会的責任を果たしながら事業活動を行っていくために、優先的に取り組むべき課題である「CSR重点課題」について、社会や事業環境の変化を踏まえて見直しました。従業員一人ひとりが日々の業務を通し、社会課題やサステナビリティについて考える機会を増やし、活動していきます。

ブランドは時代に応じて磨き上げ、価値を高めていくもの

1917年の創立以来、当社は光の可能性に挑み、新たな価値を創造し続けることで高い認知度を誇るグローバルブランドを築いてきました。しかし現在、ニコンブランドは長期低落傾向にあるといわざるを得ません。ニコンブランドを再構築するため、社長直轄組織のデザインセンターを主とした「ブランド戦略チーム」では、「デザイン」の切り口からブランド価値の向上、活用を目指すプロジェクトを進めています。

例えば、長期成長領域での活動を通して経営ビジョンを体現し、ニコンの成長戦略を対外的にアピールする動画「未来を実現するものづくり」を当社ウェブサイトに公開しました。社内向けには、イントラネット上にブランディングサイトを開設。役員インタビューや動画コンテンツを掲載し、社内コミュニケーションの活性化や従業員と会社のエンゲージメント強化を図っています。

これまでの当社は、ブランドイメージを守ることを優先し、既存の事業領域の範囲だけで施策を考えるといった、やや保守的な傾向があったと自覚しています。ブランドとは過去の蓄積だけではなく、時代や社会の期待に応じて磨き上げ、価値を高め続けていかなければならないものだと私は考えます。今、当社に求められているのは、信頼性を高め、高度な技術力に裏打ちされた創造性を余すところなく発揮して、社会やお客様の課題やニーズと真摯に向き合うことにほかなりません。いずれの事業においても、「お客様が真に求めるものは何か」と考え、最適なソリューションの提供に向けて挑戦し続けることで、価値ある製品やサービスを提供していきます。

未来に挑戦する新しいニコンを確立する

2021年3月期は、2020年3月期から続く試練の1年でした。しかし、長期成長領域の進展、既存事業の改革などにより、着実な改善基調にあると確信し、増配方針を決定しました。今後も経営環境の変化に即応しながら既存全事業の黒字化と成長領域における新事業の創出に注力していきます。

社長就任以前、技術戦略委員長として全社の技術を見渡した際、ニコングループ内には将来の基盤となる大きな可能性を秘めた技術が数多く存在することを再確認しました。ものづくりの仕組みを根底から変革する「インダストリー4.0」の台頭、新型コロナウイルス感染症によるニューノーマル時代の到来など、社会に対し当社が価値を提供することで、社会課題の解決へ導く機会は多々あると考えます。

経営ビジョン「Unlock the future with the power of light」は、社会のさまざまな課題に向き合い、明るい未来を切り拓いていくという、私たちニコングループの志を示しています。未来に挑戦する新しいニコンを確立し、企業価値の長期的な向上へ全社一丸となって取り組んでいくという決意をもって、ステークホルダーの皆様へのメッセージとさせていただきます。未来をつくるニコンの新たな挑戦の数々にどうぞご期待ください。