超解像顕微鏡

革新的アプローチが実現した「光学顕微鏡を超えた光学顕微鏡」

画像

従来の光学顕微鏡を超える解像度での観察を可能にし、近年、ライフサイエンス分野の先端研究で注目を集めているのが超解像顕微鏡です。ニコンのテクノロジーが、細胞内の超微細構造まで直接観られるナノスケール観察を実現します。

カメラや顕微鏡などの光学技術において、解像度(分解能)とは接近した2つのものを別々のものとして識別する能力を指します。一般的な光学顕微鏡は対物レンズの大きさと光の波長の関係から、その限界は約200ナノメートル。この限界を超えた高い解像度での観察を可能にする光学顕微鏡が、「超解像顕微鏡」です。

これまで見ることのできなかった細胞小器官の構造などが観察できることから、生物、医学、医療など、ナノスケール観察が必要とされるさまざまな分野の研究のさらなる発展への貢献が期待されています。

N-SIM

2000年に米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDr. Mats G.L.Gustafsson※1らが発表した「構造化照明顕微鏡法(Structured Illumination Microscopy=SIM)」と、ニコン独自の光学技術を組み合わせ、従来の光学顕微鏡の約2倍にあたる高解像度イメージングを実現したのが超解像顕微鏡「N-SIM」シリーズです。

解像度以下の観察対象にパターン状の照明(構造化照明)をあてた際に発生するモアレは、その特性上、元のパターンより粗くなるため、光学顕微鏡で撮影することができます。N-SIMは、構造化照明の向きや位相を少しずつ変化させて撮影し、取得した複数の画像を演算処理することで、観察対象の詳細な構造を復元。顕微鏡の構造を大きく変えずに照明を工夫し、従来の光学顕微鏡の約2倍の高解像度を実現しています。

さらにニコンでは、画期的な高速構造化照明システムを開発。超解像顕微鏡「N-SIM S」では、最速毎秒15フレーム※2の高速画像取得を実現しています。

  • ※1ハワード・ヒューズ医療研究所 Janelia Farm Research Campus グループリーダー(2008年~2011年)
  • ※2512×512画素を2D-SIMモードで2 msec露光時
画像
既知の高空間周波数のパターン照明を照射することによって、微細構造が「モアレ縞」として取得できる。
画像
従来の光学顕微鏡画像
画像
N-SIM画像

N-STORM

ハーバード大学が発表した超解像技術STORM法(Stochastic Optical Reconstruction Microscopy:確率論的な再構築光学顕微鏡法)をベースに、共同開発によって製品化した蛍光観察用の超解像顕微鏡です。

蛍光観察は、観察対象に可視光線などを照射して励起させた蛍光分子を画像として記録、観察する手法です。これまではすべての蛍光分子が一斉に光り、やがて退色してしまうため、解像限界である200ナノメートルよりも狭い間隔で隣接している場合、それぞれを区別できませんでした。

N-STORMでは、ある条件下では明滅を繰り返す蛍光分子を蛍光観察に利用。レーザー光を照射し蛍光分子をランダムに明滅させ、その蛍光や位置を数十ナノメートルの精度で取得。これを5,000~10,000回ほど繰り返して、「点描画」のように1枚の画像を完成させます。蛍光観察の新しいアプローチにより、従来の光学顕微鏡の約10倍という高い分解能を実現しています。

画像