半導体露光装置

半導体の小型化・高機能化を可能にし、デジタル社会の進化に貢献

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スマートフォンや家電など、さまざまな製品が小型化・高機能化され、生活の中の一部として使われています。これらの製品に欠かせない半導体(半導体集積回路)の進化に大きく貢献しているのが、ニコンの半導体露光装置です。

半導体露光装置は、複雑で微細な電子回路のパターンを大きなガラス板に描いたフォトマスクを、極めて高性能なレンズで縮小して、シリコンウェハと呼ばれるシリコンの板に焼き付ける装置です。

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半導体露光装置には、3つの技術が必要とされています。
この3つの技術が半導体露光装置の性能を決めるといっても過言ではありません。

第1は、「投影レンズの解像度」です。レンズの解像度が高いほど、細かい回路パターンを転写することができます。ニコンではレンズの原材料の調合から熔解、研磨、コーティング、組み立てまで一貫した生産体制で品質を管理し、レンズ性能を高めています。

第2は、「重ね合わせ精度」です。1個の半導体を作るためには、数十回フォトマスクを交換しながら、繰り返し回路パターンを焼き付けなければなりません。このため、シリコンウェハとフォトマスクの位置ずれがないことが非常に重要となります。ニコンでは複数のセンサーを用いて、フォトマスクとシリコンウェハの位置決めを正確に行っています。

第3に、「スループット」です。これは半導体の量産時に大切です。スループットは、1時間あたり何枚のシリコンウェハを露光できるかという生産性を表しています。ニコンでは1枚のシリコンウェハに数百の半導体を露光するために、シリコンウェハをセットするステージの高速移動・停止を実現し、高スループットを達成しています。

ニコンではこれらの3つの技術を高いレベルで組み合わせ、「史上最も精密な機械」と呼ばれる半導体露光装置を製造しています。

液浸露光

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半導体は誕生以来、急速に微細化し、それに伴い、多くの機能を搭載できるようになりました。その進化にあわせ、ニコンでは半導体の微細化に対応した解像度の高い露光技術を開発してきました。しかし、半導体の微細化を推し進めていくと、ある一定以上はどうしても小さくできないという理論的な限界がありました。この限界を打ち破ったのが、ニコンの半導体露光装置で採用された「液浸露光技術」です。

液浸露光技術とは、半導体露光装置のレンズとシリコンウェハとの間を、空気(屈折率1.00)よりも屈折率の高い純水(屈折率1.44)で満たすことで、純水自体をレンズのように使ってより高い解像度を達成するものです。

この技術により、今までの限界を大きく超えた40ナノメートル以下での半導体製造が可能になりました。

マルチプルパターニング

液浸露光とともに、現在の最先端の半導体製造を支えているのが、マルチプルパターニング技術です。マルチプルパターニングとは、一度の液浸露光では描き込むことが難しい高密度な回路パターンを、現行の半導体露光装置で転写できる2つ以上の密集度の低いパターンに分割露光し、これらのパターンを組み合わせて、最終的に密集度を高める技術です。

原理的には簡単に思えるかもしれませんが、同一ウェハ上に何度も露光をくり返して回路を積み重ねていく半導体製造では、露光位置にズレが生じないよう、極めて高い重ね合わせ精度が求められるのです。誤差わずか数ナノメートル以内という、これまで以上に厳しい重ね合わせ精度と、生産性を両立させ、20ナノメートル以下のプロセス量産を可能としました。5ナノメートルノードプロセスの半導体量産用として開発されたArF液浸スキャナー「NSR-S635E」では、MMO2.1ナノメートル以下、スループット毎時275枚以上の生産性を実現しています。

  • MMO(Mix-and-Match Overlay):同一機種間の重ね合わせ精度