D5 / D500

2017.1.10デジタル一眼レフカメラ

継承と進化 フラッグシップモデルの誇りと飽くなき追求

ユーザーが使い倒して、
表現に結びつけていけるものを左:プロダクトデザイン担当 塚本 千尋
右:プロダクトデザイン担当 二階堂 豊

静止画でも動画でも、映像機器というものは、フィールドやスタジオに持って行って、ユーザーが意図したシーンを撮影する手段の1つでしかないと思っています。ユーザーがファインダーを通して被写体と向かい合い、一瞬を切り取ったり、構え続けて操作する中で、多少の雨や砂埃などさまざまな環境下でも応えられる製品を、高いレベルで実現しました。

機動力を体現する造形

被写体をとらえるために、レンズから入る光軸を中心に据えた造形。それがニコンの一眼レフカメラの造形思想です。D5の開発では、それを受け継ぎながら、より精悍なデザインを目指しました。

例えば、ペンタプリズムが搭載されているカメラ上面は、カメラの中でも重要なデザイン要素の1つです。そこをうまく包含しながら、被写体に向かって直線的に絞り込まれていく方向性をデザインしました。また、「Nikon」のロゴ部分の造形も、上面からの斜面を利用しながら、あえてカメラらしい多角形にしています。このようなデザインで、どのような場面でも機動力を発揮できるシャープさや精悍さを表現しました。そして、ほぼ同時期に発売したD500の造形も、同じ思想でデザインしています。

D5とD500では光学系の大きさが違うので、D5の長所は残しながら、いかにボディーをコンパクトにするかがD500の課題でした。カメラ上部の雰囲気や造形のラインなどを同じようにまとめる一方で、目の高さと光軸中心の位置関係は異なるので、D500のサイズに合わせて角度などを細かく調整しました。

さまざまな手のサイズに適応させるために

機動力向上に欠かせないポイントとして、ホールディングがあります。大きくて重いレンズをボディーに装着しながら、カメラを片手で握って持ち歩くことを想定し、撮影時の握りやすさに加えてレンズ装着時の持ち運びやすさにも配慮しました。背面側で親指が当たる部分の引っかかりや、グリップ部分の丸みなど、さまざまな部分をコンマ1mm単位で調整。何度も試作模型(モックアップ)を作り直して、さまざまな手の大きさに馴染む形を検証しました。そして、プロのユーザーにも、納得してもらえる造形が完成したのです。

難解なパズルゲーム

ボタン操作のしやすさについても検証を重ねました。重いカメラを持ちながらの操作になりますので、両手でカメラを支えながらボタン操作することを考慮しました。ファインダーの中心と液晶モニターをできるだけ合わせて、被写体に向き合った状態で違和感なく操作できるように心掛けました。また、実際にフォトグラファーたちに同行して、撮影時の所作などを参考にデザインに落とし込んでいます。D500ではチルト液晶を搭載するにあたり、単純に片側へボタンを寄せることはせず、難解なパズルゲームのような、内部機構を少しずらしては等間隔にボタンを配置するという地道な作業を繰り返し行いました。

本物の革を目指して

さらに、フラッグシップ機ならではの意匠性として、本物感や高級感にもこだわりました。D5とD500では、グリップ部分に使う素材として、革シボを特注しました。本革に近い風合いにするために、しわのレイヤーや毛穴のレイヤーなど何層も重ねて調整しています。触った感触は、凹凸がハッキリ出て少しザラザラしていますが、そのぶん摩擦があり、手に引っかかりやすくなりました。

一貫した操作性左:GUIデザイン担当 松田 俊一
右:GUIデザイン担当 宇梶 純一

GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)デザインとしては、D5とD500は基本的に共通のデザインです。ユーザーは複数のカメラを同時に使うことも多いので、製品単体ごとにGUIデザインを変えることはしません。シリーズとして一貫した操作性を大事にしています。一方で、当然ながら改善も行っています。D5とD500では例えば、カスタムボタンの設定画面を分かりやすく、素早く設定できるようにデザインをし直しました。

「その一瞬」を逃さないためのワークフロー

今回、GUIデザインのポイントの1つに、再生に関するワークフローの高速化があります。フラッグシップ機で初めて搭載されるタッチパネルを用いて、プロ撮影現場で繰り返される「撮影→再生(構図・ピント確認)→再生(要・不要の判断)→次の撮影」という一連の流れを、できる限りスムーズにすることを目指して作り込んでいます。

D5とD500 には再生画像を高速で切り替えられるフレームアドバンスバーを搭載しています。画像再生時に液晶モニターの下部をタッチして、そのまま指のスライド量により画像の切り替えをコントロール。撮影後の確認フローをより効率的に行える機能となります。フレームアドバンスバーのつまみの有無・指標の形状、表示位置、サイズなど、さまざまなパターンを作成しました。それらを一つ一つシミュレーターを用いて検証していき、議論を重ね、現在のデザインを作り上げました。

目指すは名脇役

フラッグシップ機は機能が多く、画面内の情報量も増えます。一方で、必要な情報は大きく見やすく分かりやすく表示したい。これまでに発売したカメラのGUIデザインの長所を継承しつつ、情報量と見やすさのバランスを取るのに苦労しました。インフォ画面の配色についても、あらゆる場所で見やすさを維持できるように、明るい場所と暗い場所のそれぞれで背景色と文字色のコントラストをしっかり確保しています。

GUIデザイン コントラストのシミュレーション画面

再生時、撮影時どちらのGUIにおいても、あくまで主役は映像だと考えています。撮影時のフレーミングや撮影画像の確認の際に邪魔をしないことを第一に、意識しなくても自然に使うことができるGUIを目指してデザインしています。