III. 光学ガラス開発工程の改善

ものづくりを通じた新たな価値創造。

ニコングループでは、ものづくりを支える根幹技術の改善や進化を追求し続けることで、開発・生産の効率化や品質向上をめざすと同時に、エネルギー使用量や廃棄物の削減など環境負荷低減にも取り組んでいます。

経済効果


実験リードタイムを、75%短縮しました。

環境効果


実験に関わるエネルギーを、年間で約30トン(CO2換算)削減しました。
廃棄物量を、年間で約103トン削減しました。

カメラや望遠鏡、顕微鏡などに用いられる光学ガラス。光学ガラスは、機能や用途によって求められる屈折率が決まっており、その屈折率を小数点以下6ケタという高い精度で調整する必要があります。その開発はニコンの事業を支える根幹技術のひとつであることから、グループ連携のもと、絶えず改善策を検討・実践しています。そうした取り組みの成果として、光学ガラスの開発・製造を担う光ガラス株式会社では、開発効率を飛躍的に向上させました。

従来、光学ガラスの開発にあたっては、まず小規模な実験でガラス原料を調合(組成開発)して製造条件を設定、次に大規模な量産設備で実験を行っていました。しかし、小規模実験で設定した製造条件が量産実験で再現できないというケースが珍しくありませんでした。量産実験ではガラス原料に熱を加えて熔かす際、設備が大きいため場所によって温度にムラが生じやすくなり、その結果、成分が不均一になり屈折率や透過率の低下につながっていました。

こうした問題が起きた場合は小規模実験と量産実験を再度行う必要があります。しかし、温度のムラのみによって不具合が起きたとは限りません。原料の種類や調合、計量、混合、熔解、冷却など、各工程における多様な要因が絡み合って起きるため、ひとつひとつ検証していく必要があります。そのため、生産開始までに長い期間を要するだけでなく、ガラスを溶かすために大量の熱エネルギーを使用し、廃棄ガラスも多く発生していました。

そこで光ガラスの開発部門は、ニコンと連携して効率化に着手。1年間をかけて、開発・設計から製造までの各プロセスで実験結果を左右する要因を細分化して分析。それらの最適化を図ることで、設備規模などの条件が異なっていても同じ結果を得ることに成功しました。これにより、開発のリードタイムが大幅に短縮したほか、品質レベルの向上、コスト削減を達成し、従来製品の品質改良や新製品の短期開発を可能にしました。さらに、エネルギー使用量や廃棄物発生量の抑制といった環境側面の効果も表れています。

小規模実験
量産実験

開発担当者の声

光ガラス株式会社
生産本部 技術開発部
阿部 浩之

今回の成果を活かしてさらなる効率化をめざします

光学ガラスの製造工程は様々な科学的要因が複雑に絡み合っているのに加え、その構造は目に見えません。そのため、どの要因が品質に影響しているかを特定することは、決して容易ではありません。また、当社では100種類以上もの光学ガラスを製造しているため、ガラスごとに安定生産可能な製造条件を見出すには、膨大な時間を要します。そこで、今回の取り組みでは、従来の「ガラスごとに最適化する」という考え方ではなく、「要素技術ごとに最適化する」という考え方に切り替え、新たな手法で研究開発・生産設計を進めました。この手法で見出された技術情報は、同系統内のガラスに対して汎用性があり、効率的な品質改良・新製品開発につながりました。今後は、今回取り上げることのできなかった、他系統の光学ガラスに対してもこの手法を取り入れ、研究開発のさらなる効率化により、環境負荷低減に寄与したいと考えています。

光ガラス株式会社
生産本部 技術開発部
佐藤 幸太

技術力の向上が環境負荷低減にもつながりました

新規に開発した光学ガラスの量産立上や、既存ガラスの品質改善を担当する中で、技術開発の効率化の必要性を感じました。「品質工学」という技術開発手法に出会い、汎用性を考え、評価方法を工夫するなどした小規模実験を行ったところ、量産規模で再現する結果が得られました。こうした技術力の向上は、環境面にも優しく、エネルギー使用量や廃棄物の抑制などの環境負荷低減につながりました。私が考える環境活動は、技術開発そのものと思っています。