
アスベスト(石綿)による健康被害が、社会問題になっています。アスベストは、一般住居の建材や家庭用品にも使用されているケースが多く、私たちにとって、身近な問題だといえます。すでに代替品として、人造鉱物繊維であるロックウールなどが使用されていますが、一般的な顕微鏡観察では、人体に有害なアスベストなのか、ロックウールなのか区別がつきません。そこにあるかもしれないアスベストの存在を明らかにする測定が必要となります。2005年6月、厚生労働省から「アスベストの検査分析には、位相差分散染色法を使い、倍率400倍で行う」という通達が出されました。アスベスト測定で活躍するニコン顕微鏡について、日本作業環境測定協会 精度管理センターの小西淑人部長にお聞きしました。
社会問題となったアスベスト
まず始めに、アスベストが社会問題化した経緯をお聞かせください。
私がアスベストの研究を始めたのは、1974年です。アスベストを使う生産現場では、労働安全衛生法により作業環境中のアスベスト濃度を測定し、その結果を30年間保存しなければならないことになっています。
阪神・淡路の大震災の時にビルが倒壊した現場で、そのなかにアスベストを使った多くの建材があったのが、世に知られる結果となりました。そして今、1975年くらいに建設されたビルの多くが耐用年数を迎えつつあります。国としても国内法の整備といった取り組みを進めていた矢先に、社会問題化してしまったわけです。今、一気に対応策など前倒しになってきています。
なぜ、30年も前から危険な物質だと問題視されていたのに、厳しい規制がされていなかったのでしょう?
アスベストというのは、大変便利なものだったわけです。平賀源内が秩父の山中でアスベストを発見して、燃えない布を作ったのは有名な話です。歴史を遡れば、エジプトのミイラが包まれていた布にまでたどり着く。昔、消防士が着ていた防火服にもアスベストが使われていました。これまでずっと、人類にとってなくてはならないものだったんです。
ただ、アスベストは天然鉱物であり、その特性や経済性に優れており、建築材料として幅広く使用されてきました。日本の国土は、アスベストの1つの種類であるクリソタイルが含まれる蛇紋岩層に乗っているようなものですから、本当に昔から身近に存在していたんです。危ないものだという前提で使う必要があり、それがこれまで認知されていなかったということだと思います。
同じような性質を持つロックウールの安全性は、保証されているのでしょうか?
アスベストは、国際がん研究機関で「発がん性あり」のグループ1に分類されています。ロックウールの平均繊維径は、アスベストに比べて数10~100倍太く3~5マイクロメートルもあるため、呼吸系に入りにくいとされ、グループ3の「発がん性に分類できない」に該当します。
グラスファイバーに関しては、形状的にもアスベストに似ていますし、肺に刺さる可能性もあるわけです。現在、グラスファイバーが置かれている状況は、クロではないけれども限りなくクロに近いグレーだということのようです。これからグラスファイバーに関しても、活発に検証が行われることになると思います。

アスベストとその他の鉱物繊維
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