再生医療用細胞等の受託生産事業に参入

Lonza社と戦略的業務提携契約を締結、ニコンが100%出資の新会社を設立

2015年5月7日PRESS RELEASE/報道資料

株式会社ニコン(社長:牛田 一雄、東京都港区)は、再生医療向け細胞生産で世界最大手のLonza(本社:スイス連邦・バーゼル、CEO: Richard Ridinger、以下「Lonza社」)と日本における細胞受託生産に関する戦略的業務提携契約(Facility Support and License Agreement、以下「本契約」)を締結し、当社の100%出資で新会社を設立、再生医療用細胞等の受託生産事業に参入します。

本契約により、当社はLonza社のもつ品質および生産システムを利用することができ、またLonza社から、日本における受託生産設備構築などについてコンサルティングサービスの提供を受けます。

再生医療用細胞等の受託生産とは、製薬会社からの委託に基づき再生医療で用いられる細胞を生産し、供給する事業形態です。

1. 契約締結の背景

日本は、2014年11月に施行された薬事法改正法によって、再生医療等製品はその安全性の確認、および有効性が推定された段階で「条件および期限付き承認」が与えられることになり、再生医療の早期実用化が最も期待できる環境として注目されています。

欧米では、体性幹細胞(造血幹細胞、間葉系幹細胞など)の利用が既に開始され、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の臨床応用がこれに続きます。体性幹細胞は、分化の範囲が限定されること、体内に存在する数が少なく、体外で増殖・維持することが難しいことなどの課題がありますが、人間の体内に存在する細胞として、安全性の観点および細胞の採取の容易性から、再生医療への早期応用が見込まれており、その生産と供給においても、国際的な協業が先行しています。

当社は、上記の再生医療をとりまく環境を踏まえ、日本国内において高品質の再生医療向け細胞の受託生産ができる体制作りが急務と考えました。そのため、再生医療向け細胞生産の国際的な実績を持つLonza社と業務提携契約を締結し、受託生産事業に参入します。

2. 再生医療用細胞等の受託生産事業の狙い

当社は、今回の細胞受託生産事業への参入をきっかけとして、体性幹細胞等の細胞生産ノウハウの基礎を習得し、将来のiPS細胞の再生医療の実用化に向けた取り組みを加速していきます。

既に当社は、2007年からインストルメンツ事業においてiPS細胞をはじめとしたライブセル(生きた細胞)向けの細胞培養観察装置「BioStation CT」の製造販売を展開しています。

しかし、将来のiPS細胞の再生医療の実用化には、製造工程における品質・安全評価の基準作りや運用方法の確立が必要となります。また、目的とする細胞への分化誘導の方法や大量細胞培養の必要性を考慮した、スケールアップのノウハウなどが製造事業を成功させるために極めて重要です。

当社は、Lonza社が持つ高品質の細胞生産技術のノウハウを取り入れながら、当社のコア技術である光学技術および画像解析技術を活用し、これらの課題に積極的に取り組み、再生医療用細胞等の受託生産事業を成功に導きます。

また、今回の再生医療用細胞等の受託生産事業の参入により、日本の再生医療実用化の早期実現に貢献するとともに、自社の周辺領域への事業基盤の拡大も狙います。

さらに、将来のiPS細胞による再生医療市場の大きな飛躍に備え、高品質の細胞生産を最適化するために必要な機器および消耗品類の開発を行い、ハードウェア・ソフトウェアを含むトータルソリューションを日本から世界に提供していきます。

3. 子会社設立の概要(予定)

会社名 株式会社ニコン・セル・イノベーション
代表者 中山 稔之
所在地 検討中(京浜地区を予定)
設立時期 2015年度 上期
受託開始(一部稼働 2015年度 下期
  • Process Development(開発受託)から一部受託開始
工場竣工 2017年度 上期
事業目的
  • 再生医療向け細胞受託生産事業およびそれに必要な事業
  • 創薬支援向け事業およびそれに必要な事業
  • 上記に必要な機器および消耗品類の開発・販売・製造 ほか
出資 20億円(資本金 10億円、資本準備金10億円)、((株)ニコン100%出資)

また、本子会社はマイクロスコープ・ソリューション事業部の傘下となります。
本事業の売上計上は、2017年度以降となる見込みです。

4. Lonza社の概要

Lonzaは、医薬品、バイオテクノロジー、機能性化学品のマーケットにおいて、世界で最も信頼されているサプライヤーの1社です。サイエンスとテクノロジーを活用し、より安全で健康な生活に寄与する製品を生み出しています。

Lonzaは受託製造・開発に加え、医薬品有効成分、幹細胞治療、飲料水消毒薬、ビタミンB化合物、オーガニック化粧品原料、農薬原体・中間体、産業用防腐剤、ウイルスや細菌その他病原体に対するマイクロビアルコントロールに至るまで、様々なサービスと製品を提供しています。

1897年にスイスアルプスで創立されたLonzaは、現在、全世界で40有余の主要工場及び研究開発施設と9,800人の従業員を擁し、グローバル企業として高い評価を得ています。2014年の売上高は約36.4億スイスフラン、Pharma & BiotechとSpecialty Ingredientsの2つのマーケットセグメントに特化し組織されています。詳細はwww.lonza.comをご覧ください。

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