0.1μm 以下の高解像度を高スループットで !EB(電子ビーム)ステッパーの電子光学系を米国 IBM 社と共同開発

1999年1月26日
「電子ビーム投影露光(EPL) の開発を加速・推進」へリンク:2001年3月13日

株式会社ニコン(社長:吉田庄一郎)は、米 IBM Corporation と共同開発で、最小回路線幅が 0.1 マイクロメートル(=100 ナノメートル)以下の半導体の製造を非常に高い生産性で実現するEB(Electron Beam)ステッパーの電子光学系の実証実験を、昨10(1998)年に成功いたしました。

(写真:EB ステッパー用電子光学系で焼き付けた 80nm L/S(ライン アンド スペース)のテストパターンのSEM写真)

この電子光学系は、平成18(2006)年頃より本格的な量産開始と予測される 100 nm 以下のデザインルールに対応し、現在主流の 64M DRAM の約 250 倍もの記憶容量を持つであろう 16G DRAM や、将来の高性能 MPU を 200mm ウェハで 1 時間に 40 枚以上(300mm ウェハでは約20枚)焼き付け可能です。このシステムは、いわゆる "直接描画方式" EB露光装置とは異なり、現在、半導体製造プロセスで使用の光学式(露光光源:エキシマレーザなど)のスキャニング方式ステッパー(ex. ニコン 縮小投影型露光装置「NSR-S203B」など) と同様に、レチクル上の回路パターンをスキャニングしながら縮小投影しウェハ上に焼き付けます。

開発の背景

超 LSI の高集積化は日進月歩で進み、今日では 256M DRAM の量産が開始され、更には 1G DRAM 量産の研究開発も活発におこなわれています。微細化のトレンドは今後も続き、2006(平成18)年頃には 100nm 以下のデザインルールを採用し、256M DRAM の約64倍もの記憶容量(=日刊紙約 4 年分の情報量に匹敵)を持つであろう 16G DRAM の量産が始まると予測されています。

一方、超LSI高集積化のカギを握るステッパー(縮小投影型(逐次)露光装置)は微細化の要求に、露光光源を短波長化して応えてまいりました。高圧水銀ランプが光源の g 線(波長:436nm)、次いで i(I) 線(波長:365nm)の時代を経て、現在、量産レベルでは KrF エキシマレーザ(波長:248nm)露光装置が主力になりつつあります。更に、次世代製造プロセスの研究開発には、ArF エキシマレーザ(波長:193nm)ステッパーが使われようとしており、今後の投影レンズ、そしてレジスト(感光材)等の改良次第では 100nm 程度までのデザインルールへ対応可能かと予想されています。

そして、解像度 100nm 以下を実現する露光装置として、現段階では大別して以下の 3 方式が検討されています。

  • 1.)更に短波長のレーザを光源の縮小投影露光

    露光光源を F2 エキシマレーザ(波長:157nm)に代表される、より短波長のレーザに換装していく方式です。露光装置の構成、半導体メーカーでの製造プロセス共に、現行の露光技術の延長上にあり、これまでに蓄積したノウハウの活用が可能です。また、光による露光ならではの高いスループットが期待されています。

    レンズ材料やコーティング等の技術課題が残っていますが、ニコンでは、レンズとミラーを組み合わせた縮小光学系の検討を進めています。

  • 2.)EUV 露光

    極めて波長の短い紫外線(波長:13nm)を用いた縮小投影露光で、EUVL(Extreme UltraViolet Lithography)とも呼ばれます。原子レベルの薄膜を積層して製造する反射光学系、そしてレーザ光のエネルギーでプラズマを生成して発生する極端紫外線(EUV)光源の開発などが課題です。

    ニコンは、次世代電子技術の研究組合である「技術研究組合超先端電子技術開発機構(Association of Super-advanced Electronics Technologies=ASET)」に、1998(平成10)年9月から組合員として参加し、EUV 露光の研究開発を進めています。

  • 3.)電子ビーム(EB)露光

    電子ビームを用いて、回路パターンをウェハ上に描画していく方式です。EB 露光自体は、高い解像度が得られる方式として古くから知られ、既に ASIC(特定用途向けIC)に代表される生産個数が少ない先端 LSI の製造や次世代 DRAM、MPU の研究開発用として、EB直接描画装置は実用化・市販されています。

    • 3.1. 電子ビーム直接描画方式(=現在、市販されている装置)

      電子銃から発生した電子ビームを、回路図の繰返しパターン部分を抽出して作成した 20~100 種類程度のパターンを持つレチクルに照射して得る電子ビームパターンを、電子レンズ(磁界の作用を利用)を用いて10分の 1 ~数10分の 1 倍サイズに縮小してウェハ上に逐次露光します。1 回のショット(照射)毎に、ウェハ上に最大で数マイクロメートル角を描画でき、電子回路の設計データに従って、電子ビームの数mm程度の偏向とウェハステージの移動によって、次々に回路パターンを継ぎながら、ウェハ全面を描画します。最新の描画装置の解像度は150nm。そのスループットは 200mm ウェハで 3~10枚 / 毎時程度です。

    更に、"将来リソグラフィ技術" として、スループット向上に主眼を置いた研究開発が進められている EB 露光装置があります。

    • 3.2.電子ビームレチクル転写方式(研究開発中の装置)

      スループットの飛躍的な向上を目指して開発が進められている方式です。現行の半導体製造プロセスで使用する光学式(露光光源:エキシマレーザなど)のスキャン型ステッパーと同様に、レチクルの回路パターンをウェハ上に電子ビームでスキャニングしながら縮小投影して焼き付けます。

    今回 米 IBM 社と共同開発し、実証実験に成功した電子光学系は、この 3.2. のレチクル転写方式による像形成を基本原理としています。「IBM 社独自の電子光学技術により大電流かつ大偏向の電子レンズを実現し、飛躍的にスループットを向上した EB ステッパーを」、という構想で、100nm 以下の高い解像度で 200mm ウェハを毎時40枚以上(300mm ウェハでは約20枚)、露光可能です。
    "ポスト ArF 露光装置" のひとつとして、商品化を目指すものです。

ニコン EBステッパーの概要

電子銃から電子ビームを □ 1mm 角に形成してレチクル(回路原版)上に照射し、この回路パターンを電子レンズを用いて 1 / 4 倍サイズに縮小して露光します。1 回のショット(照射)毎に、ウェハ上で □250μm の領域(エリア)を一括で転写できます。これらの一連の動作を、レチクルとウェハを 4:1 の速度で同期を取りながら移動させ、電子ビームをレチクル上で 20mm 幅(ウェハ上では 1 / 4 の 5 mm 幅)にて電磁偏向で振りながら(走査しながら)、回路パターンを露光・接合していきます。

主な特長

  • 高い解像度を維持しつつスループットを飛躍的に向上

    斬新な設計と製造技術で、新開発の電子銃と電子レンズ系を実現しました。在来の EB 直接描画装置との比較において、極めて低収差かつ低歪(ひずみ)の電子レンズと極めて太い電子ビームにて露光をおこなえます。この電子ビームの太さがクーロン効果※1 を大幅に低減し、高解像度を維持したままで大電流による大面積の一括露光を可能としました。本システムは、現行のスキャニング方式ステッパーと同様に、レチクル(回路原版)上の回路パターンをウェハ上に 1 / 4 倍に縮小投影して焼き付けます。1 ショットで □250μm という、従来の直接描画方式に比べて実に 2,500 倍の広さの領域を露光します。電子ビームの偏向幅の大きさとも相まって、露光時間を大幅に短縮し、スループットを飛躍的に向上します。

  • ※1「クーロン効果」:

    同じ電荷同士は反発し集束しにくくなる現象。クーロン(Coulomb)力は、電荷の大きさに比例し距離の 2 乗に逆比例するため、電子(または荷電粒子)が密集するほど効果が大きい。電子を集束できないと、「ビームぼけ」を引き起こし、解像度が低下する。従って広がりのない細い電子ビームでは与えうる電流量が制限されて、スループットは向上しない。


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