事業等のリスク

当社グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しています。
なお、当社グループではグループ経営上のリスク全般につき、潜在リスクの洗い出しと優先順位付けをしたうえで、リスク対応方針の審議決定を行う「リスク管理委員会」により、リスクを整理・管理しています。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

1. 事業環境の急激な変化

映像事業の主要製品であるデジタルカメラは、ミラーレスカメラ市場における競争激化、部品の価格高騰、市場環境悪化などの可能性があります。対応として、生産販売面での最適化、サプライチェーンや物流の改革、徹底したコストダウン、デジタルマーケティングの強化、開発効率化などに取り組み、引き続き事業の収益体質強化を進めています。
精機事業が扱うFPD露光装置の需要は、ディスプレイ市場自体は安定的に需要が見込める市場ですが、大規模設備投資の反動や足元の消費抑制により供給過剰となった場合には露光装置の需要も落ち込む可能性があります。対応として、そのような環境下でも一定の利益を確保するため、新規露光装置及びサービスビジネスによる収益拡大やトータルコスト低減を進めています。
半導体露光装置の対象市場である半導体市場は中長期的に大きく成長が見込まれるものの、先端プロセス開発のEUVLへの移行度合によっては、液浸露光装置の需要が減少する可能性があります。また、当社グループの主要顧客が設備投資計画を変更した場合など、当社グループの収益に影響を及ぼす恐れがあります。対応として、収益性重視の事業戦略の下、既存顧客以外の開拓を積極的に進めるとともに、サービスビジネスを拡大していきます。
また、海外での事業展開においては、政治体制・経済環境の変動、各国間の貿易摩擦・紛争等の影響、暴動・テロ・戦争・災害・各種感染症等による社会の混乱等により、事業活動に大きな障害や損失が生じる可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性やその影響レベルについては、社会情勢等により左右されるため、具体的に予測することは困難でありますが、対応として、情報収集及び事業に与える影響の分析を行い、対策を検討、実施しています。

2. 成長ドライバーの収益拡大

2022年4月に発表した中期経営計画(2022~2025年度)期間において、材料加工・ロボットビジョンは戦略事業「デジタルマニュファクチャリング」の中期成長ドライバーと位置づけています。製造業全体のものづくり変革のスピードによっては、本計画期間である2025年度までに期待される規模への成長に届かない可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、対応として、当社グループは、デジタル化が進む製造業に対して独自の価値を提供し、新たな市場を形成していきます。また、戦略投資の一つとして、金属アディティブマニュファクチャリングにおける統合ソリューションをグローバルで提供するドイツSLM Solutions Group AG(現Nikon SLM Solutions AG)に対して公開買付けを実施し、当社の連結子会社としました。引き続き戦略投資については幅広く取り組み、事業の拡大に寄与させていきます。

3. 競争力維持強化のための新製品開発力及び開発投資

当社グループの主力事業は厳しい競争下にあり、高度な研究開発の継続による新製品の開発が常に求められています。そのため、当社グループの収益の変動にかかわらず、製品開発のための投資を常に継続する必要があります。投資の成果が十分に上がらず新製品、次世代技術の開発や市場投入がタイムリーに行えない場合や、当社グループが開発した技術が市場に受け入れられなかった場合、あるいはゲームチェンジなど抜本的な変化により当社の技術が不要となる場合、企業価値が低下し、収益が減少する可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、対応として、当社グループでは、「技術戦略委員会」にて、これからの社会や市場動向を踏まえ、注力すべき新領域の開拓や、既存事業の競争力向上につながる技術戦略と、その実現に向けた研究開発計画を策定し、グループの技術可視化、適正化を図っています。

4. 各種規制等

当社グループは、多数の事業をグローバルに展開しているため、多くの国々において、輸出入規制、競争法、労働法、腐敗防止、移転価格税制等、各種法規制の適用や企業の社会的責任を求められています。これら法規制や社会的責任として求められることは大きく変わる可能性があり、その変化により事業活動費用増加や事業の制約、レピュテーションリスク等を受ける可能性があります。また、各国および各事業領域における各種法規制に抵触するリスクへの対応や、それら変化への対応が遅延する場合、経済的損失を被る可能性もあります。
当該リスクへの対応として、当社グループでは、「リスク管理委員会」によるリスク整理・管理に加え、専門的な対応が必要なリスクに対しては、その傘下の品質委員会、輸出審査委員会、コンプライアンス委員会の3つの委員会で対応を図るとともに、サステナビリティの視点から、サステナビリティ委員会でもマテリアリティを中心としたリスクのモニタリングおよび対応を図っています。

5. 調達

近年、感染症やグローバル規模の異常気象や自然災害、地政学的な影響や国際紛争などさまざまな要因により部品の需給バランスは大きく崩れ、エネルギーや原材料価格も大きく変動しています。加えて、サプライチェーンにおける人権や環境などに関する社会課題へのステークホルダーの関心も高まっており、サプライチェーンの不安定要素・リスクが増加していると考えています。
部品調達や物流においても不確実性と変動性の高い状況が継続するため、当社グループ全体では、このような背景のもと、自社のみならず調達パートナーと同じビジョンを持ち、ともに行動するとともに、社会の声を聞き、これらの社会課題に対応できるレジリエントなサプライチェーンの構築に取り組んでいます。具体的には、調達パートナーと強固な関係を構築し、サプライチェーンの可視化を進め、調達パートナーとともにBCP(事業継続計画)策定・強化、CO2排出量の把握、人権デューデリジェンス対応の強化に取り組み、サプライチェーンのリスクアセスメントと有事に即応できる関係と仕組み構築を行っています。

6. 人材の確保・情報の流出

当社グループは、高度な技術等や専門知識及び能力を有する社員等、多様な人材によって支えられており、市場での激しい競争に打ち克つにはこうした人材の確保がますます重要になっています。有能な人材を採用・育成できず、あるいは主要な人材が退職した場合、事業への弊害や、知識・ノウハウが社外に流出する可能性があります。対応として、当社グループはありたい姿の実現に向け会社の目指す方向性や組織の目標を明確に示し、これに連動した人材戦略を実行しています。また、具体的なカリキュラムを組み、固有技術・技能の伝承と標準化・共有化を推進しています。
また、当社グループは、技術情報等の重要な情報や取引先の企業情報並びに多くの顧客またはその他関係者の個人情報を保有しております。これらの情報が漏洩するリスクが顕在化しないよう、これらの情報への外部からのアクセス制御の徹底や保管セキュリティレベルの向上を図るとともに、情報取り扱いに関する規程の整備、従業員教育等を実施しています。

7. 環境問題

当社グループは、気候変動や天然資源の枯渇、廃棄物問題、有害化学物質による汚染などの環境問題を自社の存続にも関わる問題と捉え、さまざまな対策を講じるとともに、地球環境に配慮した経営を行っています。
気候変動については、それに起因する異常気象や洪水、渇水などの自然災害や感染症の拡大により、開発・生産拠点および調達先などに甚大な損害が生じた場合、操業に影響が生じたり、生産や出荷が遅延したりする恐れがあることから、これらは当社グループが直面しているリスクであると認識しています。また、脱炭素社会に向けた動きが加速する中、各国において炭素税などの政策・法規制の導入または導入検討が進んでおり、これによるエネルギーや原材料のコストが増加するリスクがあります。こうしたリスクを低減するため、対応として、グループ全体で省エネルギー活動や再生可能エネルギーの活用、開発・生産プロセスの効率化などをはじめとしたサプライチェーン全体での温室効果ガス削減やBCP(事業継続計画)の策定に取り組んでいます。
環境政策・法規制等により、基準の順守や情報開示などの対応が求められています。これらは、年々強化される傾向にあり、対応が十分でないと、行政処分などによる生産への影響や課徴金、社会的信用の失墜など会社経営に甚大な損害を与える可能性があります。特に化学物質等に関連する法規制は、必要な材料・副資材の入手が困難になる可能性があるなど、直近のリスクであると考えています。これらに着実に対応するため、社内の規程類を整備し、担当者の教育などを実施することで、サプライチェーンを含めた管理体制を強化するほか、規制の変更などのタイムリーな把握等に努めています。また法規制よりも厳しい自主基準値を設けることで環境汚染の未然防止に努めています。