トップメッセージ

English[別窓で遷移します]

2017年9月

構造改革を着実に進捗させ、次の100年に向けた礎を築きます。代表取締役兼社長執行役員牛田 一雄

Q:中期経営計画の継続を断念し、構造改革の実施を決断された経緯についてお聞かせください。

当社はこれまで、6事業のポートフォリオで、成長する企業体に生まれ変わることを目標として掲げた「中期経営計画2015年度版」に基づき、将来に向けた成長戦略に取り組んできました。しかしながら、想定を上回る市場の縮小や競争環境の激化に対し有効な手立てを打つことができず、収益性が低下、成長事業の育成も計画通りの成果が得られず、市場が期待する企業価値の向上が実現できない見通しとなりました。特に、半導体装置事業の収益性の悪化と、映像事業における市場縮小による販売台数の減少は深刻で、このままこの中期経営計画を継続しても、根本的な課題の解決につながらず、収益構造の悪化が避けられない状況となっていました。そこで、「中期経営計画2015年度版」の継続を断念し、2016年11月に構造改革の実施を発表、売上成長を志向した戦略から、収益力強化・企業価値の向上を志向する戦略へ方針転換するという決断に至りました。財務基盤が健全なうちに攻めの構造改革を断行し、「次の100年」に向けた礎を築くことが必要だと判断したからです。

この構造改革は、ニコングループの重要な岐路となるので、実施を決断するまでの過程では、時間をかけ慎重に検討を重ねました。臨時取締役会を2回開催し、定期取締役会と合わせると計5回にわたり十分な意見交換を行い、社外取締役の方々の意見も積極的に聞きました。最終的には、副社長の岡との話し合いを経て、「やるべき」という判断を下すに至りました。現在、取締役会の全面的なサポートを得て、構造改革に自信を持って取り組むことができています。

また、構造改革の一環として、国内で1,000名規模の希望退職者を募集し、2017年3月末に1,143名が退職しました。このことは経営者として責任を痛感しています。退職した方々の思いに応えるためにも、必ずや構造改革を成功させ、次の100年の礎を構築していきます。

Q:構造改革のこれまでの進捗と今後の取り組みについてお聞かせください。

構造改革開始から現在までは、想定通りに進捗しています。先に述べた、希望退職者の募集に加え、半導体装置事業、映像事業および本社部門において、従業員の配置転換を含めた人員適正化を実施し、固定費を削減しました。また、収益性を重視した生産・販売体制への転換を推進し、適正な利益率確保のためのコスト見直しを徹底しています。開発・生産面では、2017年2月に、光学部品の生産および生産技術の機能を、当社の連結子会社である株式会社栃木ニコンへ集約し、ニコン製品の優位性の中核を担う光学部品の生産技術強化のための組織・業務統合を行いました。また、2017年4月には光学本部を新設し、これまで各事業部などに分散していた光学設計機能を集約しました。これらによって、一番の強みである光学技術をさらに向上させる効率的な開発・生産体制を構築することができたと認識しています。

2018年3月期は構造改革を「第2フェーズ」へと移行させています。「半導体装置事業の黒字化実現」、「映像事業の収益モデル強化」、「経営体質改善への本格的な着手」の3つを第2フェーズの経営方針として、コスト構造の抜本的な見直しや事業パフォーマンスの新しい管理プロセスの運用などに取り組みます。

Q:構造改革成功に向けたポイントをお聞かせください。

構造改革発表後に、従業員へのアンケートを実施したところ、賛同する意見が非常に多く、構造改革を通じて変わろうとする意思が伝わってきました。一方、成長戦略が発表されていないことから、構造改革ということで縮小均衡を連想してしまい、5年先、10年先のニコングループがどうなるのかということに対して、不安を感じているという意見も見受けられました。その気持ちはよく理解できるのですが、今は目の前の構造改革に集中することが重要だと社内には繰り返し伝えています。中期経営計画を断念した反省から、2020年3月期を初年度とする新中期経営計画では、具体的で、地に足の着いた成長戦略をしっかりと説明させていただく予定です。

また、資本市場の視点で経営するために、「ROE」*1を経営指標として設定しました。事業ユニット単位では「ROIC」*2を活用していきます。ROICを因数分解し、各職場レベルでやるべきことが明確になるところまで「KPI」*3として落とし込みます。世界中の各現場まで経営の意思を分かりやすく伝えるための手段を講じなければ、構造改革の成功はありません。

Q:ニコングループは、創業以来100年にわたり、さまざまな価値を創造されてきました。次の100年に向けてどのような企業価値を創造しますか?牛田社長の想いをお聞かせください。

ニコンは、2017年7月25日に創立100周年を迎えました。創立以来、光利用技術と精密技術をベースに映像文化や学術、産業の発展に貢献するとともに、未知の領域を切り開く製品を提供してきました。これは、ひとえにお客様、株主・投資家、パートナー企業の皆様からご愛顧いただけたからにほかなりません。心から感謝しています。

ニコンは、この100年にわたる歴史の中で、非常に優れた技術や知見、経験を蓄積してきました。それらを既存事業の分野に活かすだけではなく、今後はさらに積極的に新分野を開拓していく考えです。ニコンは「光」で世の中を変えていく会社です。「光に関する分野と言えばニコン」、「どこを見てもニコンの技術が使われている」と言っていただけるような会社を目指していきます。折しも世の中は第4次産業革命が進んでおり、これまで以上に「光」に注力し、ニコンにしかできない製品やサービスを提供することで、産業革命の主役になることもできるはずです。

現時点で見えている新たな可能性の1つとしては、AI (人工知能)との融合です。従来、カメラや望遠鏡、顕微鏡などは、人間が見ることが前提でした。しかし、今では、人間が見なくてもAIが画像からパターン認識し、判断することができるようになってきています。例えば、当社では、当社の子会社であるOptos Plcの超広角走査型レーザー検眼鏡で撮影した網膜の画像から、糖尿病による眼疾患の有無、進行度合いなどをAIの一種であるMachine Learningで評価・助言し、簡易な診断ソリューションを提供する取り組みを進めています。このように、脳の役割を担うAIに眼の役割を担うレンズとセンサーを持ったニコンが加わることで、これからの産業界の中心としての役割を担うことが可能です。ニコンが進出していく領域はこれからもさらに増えていくと確信しています。

Q:この度新たに策定されました、新経営ビジョンについてお聞かせください。

創立100周年を迎えるにあたり、新たな経営ビジョンを発表しました。これには、ニコンの光学技術、つまり「光」の可能性をさらに強調したいという私自身の思いが込められています。「光」の可能性はこれからさらに広がり、さまざまなところに光学技術が組み込まれていくと確信しています。その中で、ニコングループは新たな価値を提供し、次の100年においても、人々の暮らしに貢献する企業グループであり続けたいと思います。

また、新領域にチャレンジしていくために必要なマインドセットとして「心掛け」も作成しました。新しい発想を生み出すための「好奇心」、誠実な心でさまざまな価値観を受け入れ多様性を尊重する「親和力」、そして、自らの考えを伝え共有することで大きな流れを創り出す「伝える力」の3つです。私たちは、この経営ビジョンと心掛けを胸に、第4次産業革命を実現する力となり、これからの世の中を光で照らす存在になっていきます。

Q:コーポレート・ガバナンスの強化におけるポイントをお聞かせください。

当社は、従前よりコーポレート・ガバナンスの強化に努めてきました。2016年6月には、取締役会の監督機能のより一層の強化と、権限委譲による執行責任の明確化・意思決定の迅速化を図るため、監査等委員会設置会社に移行しました。これは、コーポレート・ガバナンスを強化するという強い意思の表明でもありました。社外取締役の方々には、このメッセージを受け止めてもらい、これまで以上に活発な審議が行われるようになり、また、審議の質・量ともにより充実しました。構造改革の決定に際しては、臨時取締役会を含む5回の取締役会の中で、納得のいくまで話し合い、意見を聞くことができました。豊富な経験をお持ちの社外取締役の方々からの意見は非常に参考になります。

今後は、経営の監督と執行の役割をさらに明確化し、モニタリング強化の観点から社外取締役の比率を将来的に高め、最適な取締役会の構築に取り組んでいきます。

Q:構造改革の先にどのような未来が待っていますか?ステークホルダーに向けたメッセージと共にお聞かせください。

現在進めている構造改革は、次の100年に向けた礎を築くための改革です。構造改革の終了後は従来の事業・製品にこだわらず、もっと視野を広げ、どれだけ世の中に貢献できるのかというマインドで新しい価値を創出していきます。そのためにも、ニコンという会社に何ができるのか、何を持っているのかを、ステークホルダーの皆様にしっかりと伝えていくことが重要です。ニコンの技術で提供できるソリューションを理解していただき、未来を創造するパートナーとして選んでいただくことが、新たな可能性への扉を開くのだと思います。

また、利益還元方針については、従来は「総還元性向30%以上」を方針としていましたが、安定的な株主還元のさらなる充実を目的とし、2018年3月期より、「配当性向40%以上」を基本方針とします。なお、業績と株主還元との連動性を重視する方針は継続し、株主還元全体に対する管理指標は、引き続き総還元性向を用いていきます。

ともかく、まず構造改革をしっかりとやり抜きます。そして、地に足の着いた成長戦略を策定し、企業価値を持続的に高める企業に生まれ変わり、株式市場においても真に魅力のある会社にしていきます。

ステークホルダーの皆様には、まずは構造改革を見守っていただきたく、順調な進捗がご報告できるよう、私が先頭に立ちニコングループを力強く牽引していきます。そして、過去100年にわたり積み上げてきたニコンの技術や知見、経験が、これまで以上に新たな価値を創出するフェーズが来るのをお待ちいただきたく思います。

引き続きご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。