トップメッセージ

リーディングポジションを確立し、持続的成長を目指すニコングループへ。木村 眞琴 取締役社長兼社長執行役員

Q1:2011年3月11日に発生した東日本大震災では、どのような影響を受け、どう対応されましたか?
A1:

まず、東日本大震災により亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。誠に残念ながら、ニコングループの従業員にも犠牲者が出ました。

業績という点では、2011年3月期は、震災により、売上高で80億円、営業利益で30億円のマイナスの影響を受けました。また、1製作所・7製造会社が被害を受け、操業が停止しましたが、3月末までに順次操業を再開し、4月末までに生産能力は震災前の水準に回復させることができています。

今回の震災では、復興に向けての現場の力強さ、チームワークを感じました。困難な状況の中、我々経営陣の期待以上に努力してくれて、感謝しています。また、世界中からさまざまなかたちでエールをいただいたことにも感激し、改めてニコンブランドに対する信頼と期待を感じました。

Q2:震災や円高という厳しい経営環境の中で2011年3月期は黒字転換しました。その要因についてどのように分析されますか?
A2:

2011年3月期は、精機カンパニーでの半導体露光装置関連の市況回復と液晶露光装置関連市況の伸長、映像カンパニーでの販売好調の継続、インストルメンツカンパニーでの産業機器関連市況の回復がグループ全体の業績に寄与し、震災と円高の影響を吸収したうえで、計画どおり、13%の増収と黒字転換を達成することができました。

まず精機カンパニーでは、半導体デバイスの世界需要の回復およびモバイル機器の市場拡大などを背景に、最先端の半導体露光装置および大型パネル用液晶露光装置の販売台数増加により、大幅な増収を達成し、黒字転換を果たしました。映像カンパニーでは、デジタル一眼レフカメラ市場が順調に拡大し、コンパクトデジタルカメラも新興国市場を中心に需要増が続いたことから、円高による影響を吸収し、増収増益を達成しました。インストルメンツカンパニーでは、バイオサイエンス分野でハイエンドのシステム製品に注力、産業機器分野では特長のある新製品を投入・拡販した結果、大幅な増収となり、赤字幅を縮小しました。また、第4四半期は、12四半期ぶりに黒字化を達成しました。

Q3:ニコングループを取り巻く事業環境と2012年3月期の見通しについて教えてください。
A3:

事業環境は回復しており、2012年3月期も成長傾向は続くと見ています。特に新興国の成長が追い風になると考えます。また、震災により、部品調達のためのサプライチェーンに被害が出ましたが、想定以上に早く改善しています。

精機カンパニーは、半導体露光装置市場が引き続き堅調に推移し、ArF液浸スキャナー「NSR-S620D」の出荷が本格的に進むと見ています。液晶露光装置市場も、当社が得意としている中小型パネル用装置の市場がアジアを中心に拡大すると予想しています。これにより、精機カンパニーの2012年3月期は大幅な増収増益を見込んでいます。

映像カンパニーにおいても、デジタルカメラ市場は堅調な需要が見込まれています。 しかしニコングループにおいては、デジタル一眼レフカメラと交換レンズの生産拠点であるニコンタイランド社が浸水被害を受け、10月上旬から操業を停止していますが、同社周辺の排水作業が11月26日に完了しました。今後、工場のインフラと製造設備の復旧に努め、2012年1月からの一部操業開始を目指します。なお、タイにおける協力工場での限定的な代替生産を当初の予定より早く実施し、デジタル一眼レフカメラと交換レンズの一部の機種の出荷を11月30日から開始しました。生産の平常化に向けた対応を継続して行い、2012年3月末に、デジタル一眼レフカメラと交換レンズを通常の生産量に戻す計画です。

インストルメンツカンパニーに関しては、バイオサイエンス分野では前期に続きハイエンドシステム製品の販売拡大に取り組み、産業機器分野では新製品の非接触三次元測定機の販売を本格化していきます。

Q4:常に新たな価値を提供し続ける企業を目指した中期経営計画の考え方と、今後の事業展開のポイントについて解説をお願いします。
A4:

中期経営計画の基本的な考え方は、常に成長が可能な企業になるために、企業体質を強靭なものに変えていこうというものです。企業が成長するために必要なのはヒット商品そのものではありません。ヒット商品を生み出す体質と販売後にビジネスとして享受できる体制ができていることであり、それらが持続的成長には不可欠だと考えます。それを実現するために、当社では、4つの方針を掲げています。「ニコンブランドの拡がり」、「新規事業の創出」、「一体感とスピードのある組織の実現」、そして「事業機能の強化とプロセス改革」です。

これらの基本方針に全力で取り組むとともに、2014年3月期に、売上高で1兆2,000億円、営業利益で1,350億円を目指す計画です。

精機カンパニーでは、「NSR-S620D」の早期安定稼働と拡販により競争力の強化、シェア拡大を目指します。また、最先端の半導体露光装置でも製造リードタイムを6ヶ月まで短縮します。これにより、市場拡大時における販売機会を増やし、市場縮小時における在庫リスクを減らすとともに、コストダウンを図り、収益力を強化します。一方、液晶露光装置事業は、高精細化ニーズに対応した製品展開を推し進めます。

映像カンパニーでは、映像分野のNo.1ブランドになるために、認知度の向上とイメージの強化を図ります。そのためには、新興国市場の開拓が大きなテーマだと考えています。近年はBRICs市場の開拓に注力しており、中国から始まり、ロシア、インド、最近ではブラジルに販売会社を設立しました。また、タイにも販売会社を設立し、今後はその他の地域にも注力していくつもりです。映像の新しい楽しみ方を提案すべくレンズ交換式アドバンストカメラ「Nikon 1(ワン)」を10月に発売しました。

インストルメンツカンパニーにおいては、さまざまな顧客のニーズに応える付加価値の高い製品を提供し、顕微鏡事業では先端研究分野で、測定機事業では非接触三次元測定分野でリーディングポジションを目指します。

Q5:CSRへの取り組みについてどのような方針をお持ちですか?
A5:

ニコングループでは、2006年に「CSR重視の経営」を中期経営計画で掲げてから、CSR委員会の設置、ニコンCSR憲章の制定、CSR中期計画の策定、国連が提唱する「グローバル・コンパクト」への賛同などさまざまな取り組みを行ってきました。

2012年3月期からは、CSR中期計画の中で、「環境経営の拡充・推進」「コンプライアンス活動の展開」「人権・労働慣行の順守と多様な社員の活躍推進」「社会・自然環境との共存(社会貢献活動)」「サプライチェーンのCSR活動推進」をグループ共通重点課題として推進しています。たとえば、「多様な社員の活躍推進」に関してはよりグローバルな人材活用・管理といった視点が、「環境経営」に関してはより少ないエネルギーでものづくりをするプロセスの実現といったことが重要と考えます。

また、今回の震災で、リスク管理や事業継続の取り組みが注目されました。リスク管理はいろいろな側面が伴います。ニコンにとってのリスクだけを分析し対応するのではなく、社会的責任という観点から、サプライチェーンを含め、細かく検討していく必要があります。今後も、CSRを常に意識した事業活動をグローバルに展開していきます。

Q6:株主還元に関する方針をお聞かせください。
A6:

当社の利益配分は「将来の成長に向けた事業・技術開発への投資(設備投資・開発投資)を拡大し、競争力強化に努めるとともに、株主重視の観点から安定的に配当を行うことを基本としながらも、業績の反映度を高めていく」方針のもと、「総還元性向25%以上」を目標としています。配当や自社株買いなどの株主還元を行う一方、企業として成長機会を逃すことのないよう設備投資・開発投資を進めていきます。

2011年3月期は増収増益となりましたので、期末配当金は前期末に比べて1株当たり10円増配の14円、年間配当金は19円(配当性向27.6%)とさせていただきました。2012年3月期の年間配当金は、1株当たり34円(うち中間配当金17円)を予定しています。

Q7:最後に、株主・投資家の皆様へのメッセージをお願いします。
A7:

東日本大震災に際しては、世界中の株主・投資家の皆様を始めさまざまな方から温かい励ましのお便りやメッセージを多数いただきました。こうしたことを通して、ニコンというブランドが世界中に浸透していること、そして、海外売上高比率85%以上のグローバル企業として大きな責任を担っていることを改めて痛感しました。株主・投資家の皆様には、ニコンがグループを挙げて復旧に取り組んできたことをご報告するとともに、中期経営計画で発表している数値目標達成に邁進することをお誓いして、私のメッセージとさせていただきます。

  • インタビュー内容は、2011年12月1日現在のものです。