
空気も凍りつくような厳寒の地で、丸いはずの太陽が四角い形に姿を変えることがある。
この現象は、水面や地表付近の大気の温度がその上の層より低いときに起こる「上位蜃気楼」によるもの。
極寒の大自然が生み出す、光学現象の“不思議”である。
ニコンはいつも、
「光」を見つめ続けています。
蜃気楼は大気の温度の高い層と低い層との境界を光が通過する際に、その温度差による空気分子の密度の違い(温度の低い方がより高い密度になる)によって、光の進むスピードに速い、遅い、の差が生じ、これによって光が曲がることで現れます。下の層が上の層より高温の場合は、光は上の方向に曲がり、これは“下位蜃気楼”と呼ばれています。アスファルト道路の逃げ水や砂漠のオアシスの幻影などがこれにあたります。つまり空などの景色が下(地面)の方向に現れることで、そこが水面の反射のように見えるのです。この逆のケースが“上位蜃気楼”で光は下の方向に曲がります。この場合には遠くの山や島などが上方向に伸びたり浮いたりして見えます。この他に“側方蜃気楼”と呼ばれるものもあり、この場合は上下ではなく、左右の大気の温度差が要因となります。側方蜃気楼は極めてまれな現象ですが、日本の不知火(しらぬい)がこのタイプに属するといわれています。
四角い太陽は上位蜃気楼に属するものです。つまり海面や地表の大気の気温がその上の層よりも低い状態のときに現れます。この大気の状態を“逆転層”と呼びます。通常は気圧の関係で上空に行くほど大気の温度は下がる傾向にありますが、放射冷却や流氷、雪解け水、前線などの影響でこのような状態になります。逆転層の境界では光が下の方向に曲がります。これによって、日の出や日没時に水平線や地平線にある太陽が上に伸び上がって見えるために、四角形に近い形状になることがあるのです。日本では北海道の東端に近い野付(のつけ)半島付近や、北東部の紋別市などで観測されることが有名。特に気温が氷点下20度以下になった日の出直後の時間帯に見られることが多いようです。北海道の別の地域では条件によって日没時にも確認されています。また、条件がそろえば、北海道以外の地域でも四角い太陽を見ることができます。
四角い太陽は、南極でもしばしば観測されており、昭和基地で記録された四角い太陽(夕日)の連続写真では、日が沈んでいくにしたがって楕円形からキノコやダルマのような姿になり、そして四角い形に変わっています。また同じ南極で、水平線に沿うように平たくつぶれた太陽が横に移動するという現象も記録されています。いずれも強い逆転層から生じるもので、南極のドームふじの記録には、煙突の煙が上に昇らずに地平線を這うように流れていくとあります。これは外気によって急激に冷やされた煙が上空の層より温度が低くなってしまったことによるものです。この逆転層のエリアが広大な場合には、地平線の向こうに隠れている氷山や陸地、船などが見えることもあります。また、四角い太陽は北極圏の住民やイヌイットの人たちには古くからよく知られた現象のようです。
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