
晴れた日の高い空を流れる雲。
そのひとつが太陽の近くに差しかかったとき、白雲は虹の色彩を放つ。
「彩雲(さいうん)」と呼ばれるこの不思議な輝きは、特に高層の雲に現れる。
それは、太陽の光が雲の水滴などによって回折することによるもの。
天空を舞台とした、光学現象の“神秘”である。
ニコンはいつも、
「光」を見つめ続けています。
雲の白さは光のミー散乱によるもので、雲を形成する3μm~10μm程の水滴や氷の結晶に当たった太陽光線が散乱することによるものです。そして虹は、それらよりもっと大きな0.1㎜~3mm程の雨粒がプリズムのような働きをして太陽光線が七色に分光されることによるもの。では、虹の色を持つ雲"彩雲"はどのような原理によって生まれるのでしょうか。彩雲は、よく晴れた日に、卷雲(けんうん:きぬ雲、筋雲とも呼ばれる)、巻積雲(けんせきうん:うろこ雲、いわし雲とも呼ばれる)などで高い位置にある雲や、風で千切れた雲が太陽に近付いたときに現れやすいと言われています。これは、比較的薄く均等な状態で雲を構成する水滴や氷晶が漂っている状態のときに、その水滴や氷晶によって太陽光線の回折(かいせつ)が起こり、光の波長ごとに明るく(強く)見える場所が異なってくるからです。
回折とは、波(または波動)の進行方向に障害物がある場合、その裏側に波(または波動)が回りこむ現象のことです。このとき波長の長いものほど障害物を大きく回りこみます。これが、遠方の放送局からのAMラジオ放送(使用波長:100m~1000m)が聞こえるのに対し、FMラジオ放送(使用波長:1m~10m)では、近くの局の放送しか聞くことができない理由の一つです。さて、可視光線の波長は400nm~800nmとさらに短いので、大きな障害物に対してはその裏側に回りこむことはありませんが、それが水滴や氷晶クラス(3μm~10μm程)になると回折現象が起こります。この際にも、回りこむ大きさが光の波長(色)によって異なることで、各色それぞれの波長を強め合う方向の違いが生じるのです。光の回折はDVDやCD、そして蜘蛛の糸などでも見ることができます。
彩雲にはその彩り同様に様々な名前があり「景雲(けいうん)」、「瑞雲(ずいうん)」、「慶雲(きょううん)」、「五雲(ごうん)」、「紫雲(しうん)」などと呼ばれています。その存在は古くから知られ、大和朝廷の大極殿(だいごくでん)の西にある楼*の上にこの雲が現れたことで、年号をそれまでの大宝(たいほう:701年~704年)から、慶雲(きょううん:704~708年)に改めたという史実が残っています。同じようなことが神護景雲(じんごけいうん:767年~770年)にもありました。また江戸時代には、徳川家康の生母、於大(おだい)の方が埋葬された徳川家の菩提寺である伝通院(でんづういん)の上空に現れたというお話もあります。また、英語では、「iridescent cloud(イリデッセント・クラウド:虹色の雲)」などと呼ばれているそうです。実はこの彩雲、めったに見られないというものではなく、条件が揃えば現れるので、慣れれば簡単に見つけることができるそうです。
- *大極殿とは朝廷の正殿のことで、即位の大礼や国家的儀式が行われた場所。楼とは高い建物のこと。
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